豪鉱山会社のヨーロピアン・メタルス・ホールディングス(EMH、パース)は2日、チェコ北西部におけるリチウム採掘権の取得で同国産業省と基本合意したと発表した。生産したリチウムを国内で加工することが条件となる。採掘規模や環境対策などの詳細はまだ確定していないが、EMHは政府のプロジェクト参加なども含め、積極的に交渉していく姿勢を示している。
EMHは21年をかけて、ドイツ国境に近いツィーノヴェツでリチウムを最低650トン採掘する計画だ。初期投資の規模は100億コルナ(3億8,600万ユーロ)で、2021年に生産を開始する。現地で1,000人を直接雇用するほか、加工・製造分野の関連雇用でさらに1,600人の雇用創出が見込めるという。
EMHのコフラン社長は、政府の提示する基本条件を受け入れることを確認した上で、「リチウム加工のあり方や用途について、チェコ政府と交渉を詰めていきたい。また、政府がプロジェクトの投資者となる可能性についても話し合いたい」とコメントしている。
ただ、採掘への準備が進む中で、誰が採掘するかについては今月20、21日の下院選挙を控え、にわかに政治的議論が活発化している。ポピュリスト政党のANOやチェコ・モラビア共産党(KSCM)が「国内の公営企業に任せる方が大きな利益を生む」と主張するのに対し、キリスト教民主同盟(KDU-CSL)、中道右派のTOP09、市民民主党(ODS)は、「経済的・環境的条件が守られる限り、誰が採掘しても同じ」とみている。
リチウムは繰り返し充放電して使える2次電池の代表格「リチウムイオン電池」の材料で、電気自動車(EV)生産の要を握る資源だ。チェコの埋蔵量は世界全体の3%、欧州で最大とみられている。(1CZK=5.11JPY)