エストニアの「電子住民登録(Eレジデンシー)」制度がじわじわ注目を集めている。出自や住所を問わず住民登録ができ、同国を拠点とする企業を手軽に設立できるからだ。欧州連合(EU)以外の地域に住む人が、域内取引の恩恵を得るために電子住民登録を利用するケースが多いという。
手続きはほぼ全てオンラインで済む。申請時には、用紙、旅券コピー、申請理由に手数料100ユーロを添え、ネットを通じて提出する。警察・国境警備隊のチェックを通れば、在外公館で「Eレジデンシーカード」を受け取ることができる。受領時を除けば、役所を訪れる必要はない。
起業時も、用紙に記入して190ユーロを添えてオンラインで提出する。政府によれば「18分で企業登録完了」だそうだが、実際に体験したドイツ人のルー・ヒルスベッヒャーさん(29)によれば、「用紙記入に10分、登録完了のメールが届くまで12時間」だったそうだ。18分は大げさかもしれないが、それでも十二分に速い。
Eレジデンシーは政府が国際連合(UN)と共同で進めている。主に新興国・開発途上国を対象に、自営業者にEU市場の扉を開ける目的だ。例えば、インドのプログラマーがエストニアで会社を設立すれば、域内取引の利点を引き出せる。
実際に、英国がEU離脱を決めて以来、英国人のEレジデンシーは2倍に増えた。昨年5月にペイパル(PayPal)による決済が禁じられたトルコからも申請が増え続けているという。
電話やオンラインで業務が済ませられる職種に限るが、どこにいても会社を経営できるのは魅力のようで、「電子住民」の数は先月時点で2万4,052人。すでにEレジデンシー制度による収入が支出を上回った。さらに同制度を通じて設立された企業は、一律20%の法人税を納めることになる。
エストニアでは2025年までに電子住民を1,000万人に増やしたい意向だ。リアルな住民が130万人の小国、この野心は果たして実現するだろうか。