英米系格付け大手のフィッチ・レーティングスは12日、クロアチア国債の格付けを外貨建て、自国通貨建てともに「BB」から「BBプラス」へ1段階引き上げた。見通しは「安定的」。主力産業である観光業の収入が急増したことや、2013年以来の経常黒字が、19年まで続く見通しであることなどが理由だ。
2017年の観光収入は推定110億ユーロに上り、過去最高を更新した。外資系銀行による海外送金も減り、経常黒字が国内総生産(GDP)比で3.9%と前年より1.2ポイントも上昇した。今後は国内消費や投資が増えるため、19年には黒字幅が2%に縮小するとみられている。
経常黒字や、直接投資などの非債務性資金流入が堅調なことから、対外純債務は急速に減少している。14年末に対GDP比52%だったのが、17年末には26%、19年末には16%まで縮小する見通しだ。
国家債務のGDP比もピークだった2014年末の85.8%から17年末には78%へ低下した。ただ、国内通貨クーナの為替高が貢献した部分が大きい。外貨建て債務の割合が75%に上ることを考慮すると、為替変動がリスクとなる。
17年の経済成長率は、景気拡大局面にあったことや欧州連合(EU)補助金の消化率向上を背景に、3%を堅持した。19年までは同じレベルで推移する見通しだ。経済過熱のリスクは小さく、低インフレが続く。
国内最大の民間企業であるアグロコルの倒産は、これまでのところ、国の経済には影響していないが、一定のリスクは残る。
銀行業界の利益はアグロコルに関連する不良債権引当金の設定で圧迫されている。しかし、赤字に陥るほどのことはなく、業界の自己資本比率は26.6%と高い水準にある。一方で法人向け貸出金の不良債権率は28.3%と依然と高い。ただ、銀行は不良債権の売却処分を増やしており、今後は低下する見通しだ。