ロシア国営で天然ガス世界最大手のガスプロムは5日、オーストリア石油大手OMVと結んでいる供給契約の期限を2040年まで延長することで合意した。欧州のガス需要の増大を見込むOMVと、最大市場である欧州への販路を確保したいガスプロムの思惑が一致した。従来の契約では2028年が期限となっていた。
合意はプーチン大統領のオーストリア訪問を機に結ばれた。ロシアは旧ソ連時代の1968年にオーストリアへのガス供給を開始し、OMVは西側企業として初めてソ連とガス供給契約を結んだ。現在、オーストリアはガスの約60%をロシアから調達している。
欧州連合(EU)はロシアへのエネルギー依存を減らす戦略だが、OMVでは「世界最大の天然ガス生産国であるロシアを無視した安定調達はありえない」とし、ガスプロムとの取引を引き続き重視する姿勢だ。その理由として、「欧州の天然ガス需要が2030年までに2割以上増える」という国際エネルギー機関(IEA)の予測や、オランダが欧州最大のガス田の生産縮小・閉鎖を予定していることに触れ、「2030年に欧州は需要の80%を輸入に依存する」という見通しを挙げている。
OMVは上流事業でもロシアへの依存を強めている。昨年12月にシベリア西部ユジノ・ルスコエガス田の権益25%弱の買収手続きを完了した結果、天然ガス生産量は日量10万石油換算バレル増加。全生産量に占めるロシアの比率が25%に上昇している。