2019年は中東欧の経済成長がやや鈍化する見通しだ。スペインの取引信用保険大手アトラディウスによると、今年の成長率は3.2%と2011年来最高を記録するが、来年は2.5%に後退する。地域景気の低迷にユーロ圏減速による輸出減少が加わり、流動資金不足で貸し倒れリスクが今後、高まる可能性がある。
アトラディウスが、トルコと含む中東欧7カ国の企業1,400社強に対する調査を基にまとめた最新の『支払いモラルバロメーター』によると、今後12カ月間で「売掛金回収期間(DSO)が延びる」とみる企業が4分の1に上った。逆に「DSOが短縮する」と答えたのは13%に過ぎなかった。DSOの長期化は企業の流動資金不足を引き起こし、サプライヤーにとってはは貸し倒れリスク上昇につながりかねない。
2018年は11年来最高を記録しそうな中東欧だが、欧州企業への輸出で利益を稼ぎ出しているところが多く、ユーロ圏の景気悪化で長期的には低成長率を余儀なくされる見通しだ。アトラディウスのテッシュ取締役は、「輸出主導の東欧経済はグローバル経済の影響を受けやすく、グローバル経済の減速が東欧経済に及ぼす打撃は大きい」と話す。「貸し倒れリスクが拡大することを前提として、顧客の支払動向をチェックするとともに、信用保険でリスクをカバーすることが重要だ」と保険の重要性を強調している。
中東欧では最近、国内企業間の取引で資金不足を理由とした支払い遅延が目に付くようになってきた。今回の調査では、「取引先企業が流動資金不足で支払いを遅らせた」と答えた企業の割合が68.8%に上り、前年の58.4%から大きく上昇した。また、31%弱が「国内の取引先が流動資金確保の手段として支払いを繰り延べている」と答えた。取引先の支払い不能・倒産で貸し倒れを経験した企業は前年の55.8%から64.2%へ増加した。
今後6カ月間における世界経済リスクについては、米国の保護主義と金利政策、中国経済の減速、地政学的リスクを挙げた企業が多かった。回答企業の約38%が今後6カ月間に保護主義的な動きが拡大し貿易戦争に発展すると懸念していることも明らかになった。
今年の『支払いモラルバロメーター』では、従来のポーランド、スロバキア、チェコ、ハンガリー、トルコに加え、ブルガリアとルーマニアが新たに調査対象となった。