2018/10/10

総合・マクロ

改正労働者派遣指令、2カ国が無効化求め提訴

この記事の要約

ハンガリーとポーランドは4日、欧州連合(EU)域内の他の国への一時的な労働者の派遣ルールを定めた改正「海外労働者派遣指令」の内容を不服として、EU司法裁判所に指令の無効化を求める訴えを起こしたことを明らかにした。一時的な […]

ハンガリーとポーランドは4日、欧州連合(EU)域内の他の国への一時的な労働者の派遣ルールを定めた改正「海外労働者派遣指令」の内容を不服として、EU司法裁判所に指令の無効化を求める訴えを起こしたことを明らかにした。一時的な派遣として本国の社会保険制度を適用できる期間を最大18カ月に制限することなどを盛り込んだ改正指令は、EUの基本理念である「サービス移動の自由」に抵触すると主張している。

海外派遣労働者はEU域内に拠点を置く企業に雇用され、他の加盟国に一時的に派遣される労働者を指す。EUでは今年6月、域内の経済格差を利用した「ソーシャルダンピング」によって自国の労働市場が不公正な競争を強いられていると主張するフランスの主導で、海外労働者派遣指令(1996年制定)の改正案が採択された。加盟国は新指令に沿って2年以内に国内法を整備する必要がある。

改正指令は派遣労働者が受け入れ国で同業種の労働者と同等の条件で働けるようにすると共に、派遣雇用がコスト面で優位になる状況を改善することに主眼を置いた内容。具体的には派遣業者に対し、最低賃金や有給休暇、労働時間の上限などに加え、これまで規定のなかったボーナスやその他の手当てについても同業種の現地労働者と同じ条件の適用を義務付けた。

一方、従来は税金や社会保険料を本国で納める仕組みのため、実際には中東欧からの派遣労働者が現地の労働者より安い賃金で雇用されるケースが多く、ドイツやフランスなどの受け入れ国が不満を募らせていた。新ルールでは派遣労働者に対して本国の社会保障制度を適用できる期間を12カ月に制限したうえで、事前の届出を条件に最大6カ月の延長を認める。この期間を超えて受け入れ国に労働者を派遣する場合、現地の労働法や社会保障制度を適用しなければならない。

大量の労働者を送り出しているハンガリーやポーランドなどは派遣元である自国企業の競争力低下への懸念から、派遣期間の上限設定に強く反対していた。ハンガリー政府は声明で、改正指令は「派遣労働者の保護につながるルールではなく、実際のところは保護主義の手段だ」と批判。司法裁に指令の無効化を求める申立てを行ったことを明らかにした。一方、ポーランドのシマンスキー外務次官は国営通信社PAPの取材に対し、「10月3日付で司法裁に独自の申立てを行った。新ルールはサービス移動の自由を保証したEUの理念に反する」と述べた。

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