スロバキアのジャーナリスト、クチアク氏とその婚約者が今年2月、銃殺体として見つかった事件で、9月27日に4人の容疑者が逮捕された。スロバキア検察庁が今月1日に明らかにしたところによると、逮捕されたのは実行犯のトマーシュ・Sz(元警察官)、自動車を運転したミロスラフ・M(トマスの従弟)、殺人依頼を仲介したゾルタン・A、「発注者」の代理人であるイタリア語通訳のアレーナ・Zで、今回の事件が依頼殺人であることが判明した。報酬は7万ユーロで、現金で5万ユーロ、借金相殺の形で2万ユーロが支払われたという。
しかし、誰が殺人を依頼したのかがわからなければ、本当の解決には至らない。これについて、地元紙『ディエニークN』は3日、捜査筋の情報として脱税容疑で拘留中の実業家マリアーン・コチュネル氏が依頼主だったと報じた。警察はこれについてコメントを出していないが、クチアク氏は生前、コチュネル氏の脱税疑惑を取材しており、コチュネル氏から脅迫を受けたと警察にも届けている。動機は十分にあるとみてよい。
一方、殺人事件を受けて辞任に追い込まれたフィツォ前首相は報道を受け、捜査で最も有力な容疑者はコチュネル氏であり、「(フィツォ氏が党首を務める)スメル・方向党が殺人に関与していない事実は明らか」とコメントした。ただ、コチュネル氏はフィツォ氏をはじめ、政府関係者と親密な関係にあることが知られており、コチュネル氏が主犯だったとしても、スメルが「無罪」とは必ずしも言えない。また、クチアク氏が調査報道した、首相府とイタリア・マフィアとの癒(ゆ)着疑惑も払しょくされたわけではなく、スロバキアの汚職問題は解明からまだ遠く離れている。