チェコ政府が、職業訓練学校での授業と並行して企業内での職業訓練を行う職業訓練システム(デュアルシステム)の導入を本格的に検討し始めた。深刻な人手不足が経済成長の足かせになっている現状を打開する狙い。理論と実践の両立でバランスの良い人材を育て、雇用のミスマッチを減らしたい意向だ。
在プラハ独商工会議所のバウアー専務理事は、チェコ政府から「デュアルシステムに関する情報の提供を求められた」と話し、検討が始まったことを歓迎している。「チェコでは大学進学率が上昇しているが、大学では実務を学ぶ機会が少ない。逆に、職業訓練では理論や新技術の知識が不足気味だ。このため、求人に対する応募はあるが、適する人が見つからないという状況が生まれている」とし、ドイツなどで行われているデュアルシステムの導入で問題が緩和できるとの見方を示した。
欧州統計局によると、チェコの失業率は2.5%と欧州連合(EU)中で最も低い。この夏の調査では企業の37%が「事業成長を妨げる最大の要因」として「人手不足」を挙げており、その深刻さは明確だ。
結果として賃金上昇率が生産性の伸び率を上回っている。ウィーン国際経済研究所(WIIW)のエコノミスト、ポドカミネル氏の計算によると、今年1-3月期(第1四半期)の賃上げ率は10%と、工業生産高や企業粗利益の伸び率(それぞれ2.2%、3%)を大幅に上回った。
人手不足や経費増加を防ぐためには、就業率を引き上げるほかなく、そのためには新しい技術にも対応できる職能を身に着けた人材を育てなければならない。その方策の一つとして、スロバキアでも導入されているデュアルシステムが注目されているというわけだ。