欧州連合(EU)と英国の離脱協定案が正式合意に至り、英国議会が同案を承認するかどうかに注目が集まっているが、万一、無秩序な離脱(ハードブレクジット)に至った場合にEU側が受ける影響は、国によって異なる。蘭ING銀行が今月発表したリポートによると、東欧の新興国は対英依存が比較的強く、EUと英国の通商関係に経済が左右される割合が高くなるという。
国内総生産(GDP)に占める対英輸出(付加価値ベース)の割合をみると、チェコは加盟国中2位、ポーランドとハンガリーはそれぞれ3位、4位に位置する。全就業者に占める対英輸出関連産業の割合はチェコで2.1%、ポーランドで2%、ハンガリーで1.8%、ブルガリアで1.3%、ルーマニアは1.1%となっている(トルコは1.1%、ロシアは0.4%)。
産業分野でみると、ハンガリーでは経済・輸出を支える自動車工業が最も強い打撃を受ける。チェコも、自動車輸出の7%が英国向けのため、無視できない影響が出そうだ。
ポーランドでは食品産業が大きな影響を被る。対英輸出の12%(14億ユーロ)を農産物・加工食品が占めているからだ。
英国離脱の余波はEU助成金にも及びそうだ。先進工業国である同国が抜けることで、EUの1人当たりGDPの平均が低下し、助成基準である「EU平均の75%以下」が満たせなくなる国が出てくるためだ。若年失業率や移民受け入れ、教育水準といった新基準導入も考慮に入れると、ポーランドとチェコは次期EU中期予算(2021~27年)で助成額が実質20%減ることもありうる。