ロシア政府が、国際決済における米ドルへの依存を弱めようと画策している。米国政府が対ロ制裁を強化し、国民にロシア国債の購入を禁じたり、ロシア国営銀行にドルの取り扱いを禁ずる可能性が浮上しているためだ。具体的には外交レベルでの取り組みのほか、石油取引のユーロ決済、ルーブル建て輸出に対する優遇措置などが試みられている。
すでに中国とは今年9月、両国間取引を現地通貨建て(ルーブルまたは人民元)で行う方向で一致した。それまで、両国間貿易高に占める現地通貨建て決済の割合は20%と小さかった。ブリュッセル欧州世界経済研究所(Bruegel)のリバコヴァ客員研究員によると、中国側も米国との対立先鋭化でロシアとの取引関係拡大に関心を強めているという。ロシアは、同じように米国との関係が悪化しているトルコやイランとも現地通貨建て取引で合意したい意向だ。
ロシア石油3位のガスプロムネフチと同4位のスルグトネフチガスは、来年分の供給契約交渉で欧州顧客に対し(1)ユーロ建て取引(2)米国による対ロ制裁強化で支払いが滞った場合の制裁金導入――を要求している。このため、交渉が難航しているもようだ。顧客側は米ドル決済の慣習から離れることにも難色を示しているが、(2)は「制裁リスクを顧客へ負わせるもの」と強く反発している。
国内では、シルヤノフ財相がルーブル建てで輸出する企業に優遇税制を適用する法案をまとめた。付加価値税還付の迅速化や、輸出売上高の国内への送金義務を2024年まで免除することなどが含まれる。ただ、ルーブルは為替変動が大きすぎて決済通貨に向かないため、同措置がルーブル建て取引を押し上げる効果は小さいとみられる。