サハリン架橋の夢

サハリン島とロシア本土を結ぶ架橋計画が再浮上している。連邦近代化計画に盛り込まれ、最終的にはプーチン大統領が実施するかどうかを決定するという。ただ、45億ユーロ前後と推定される工費を考慮すると、実現は難しそうだ。

サハリン架橋計画はスターリンが1950年にひそかに実施を決定していた。しかし、着工前にスターリンが死去したため、闇に葬られた。

現行の計画は1999年に机上に上った。サハリン州政府のザイツェフ副首相によると、同州の経済・生活は本土からの物品供給に依存しており、消費財価格の3割弱は輸送費が占める。輸送方法を船舶から鉄道に切り替えられれば費用が安くなり、結果として輸送量が現行の5倍の450万トンへ増加すると予想される。

しかし、ロシアの思い描く橋はこれだけではない。サハリン島南端と北海道を結ぶ全長40キロメートル超の橋を建設する夢もある。こちらはスケールがケタ違いで、工費450億ユーロ以上と見込まれる。ロシア側では橋が実現すれば、日本が「シベリア鉄道に直結する鉄道輸送路を手に入れられ、欧州への貨物輸送にかかる時間が3分の1に短縮する」として、費用を負担させたい立場という。

ただし、日本側はほとんど関心を示していない。プーチン大統領と安倍首相が定期的な会合を重ねているものの、北方領土問題の解決の糸口はみえず、両国関係が近い将来、根本的に改善する見通しはない。日本は天然ガス輸入などを通じてロシアとの取引を増やしており、現時点では「できる範囲で経済的利益を確保する」という現実的姿勢を崩していない。

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