米格付け大手ムーディーズは3日発表したリポートで、中東欧における景気減速を背景に、欧州連合(EU)の所得格差縮小が鈍化するリスクを指摘した。中東欧諸国の所得拡大を継続させるには、経済構造の再編を加速し、生産性を高める必要があると分析している。生活水準面で西欧との格差がなかなか縮まらない、あるいは格差が広がった場合には、東欧で大衆迎合的(ポピュリズム的)な政治勢力が力を増し、欧州連合(EU)の運営をさらに困難にする恐れがある。このため、所得格差の問題はEU統合の成否を決めるカギの一つとして位置付けなければならないという。
ムーディーズは、チェコ、ポーランド、スロバキア、ブルガリア、ルーマニア、スロベニア、ハンガリー、クロアチアのEU加盟8カ国を分析。1990年末以来の生産性向上の原動力として、◇低賃金◇職能を有する人材◇EU助成◇東欧企業を組み込んだ欧州サプライチェーンの構築◇多額の国外直接投資(FDI)受入れ――を挙げた。ただ、2000~08年と09~17年を比べると、生産性の伸びの衰えが明確になっている。
西欧との格差縮小に向け伸びしろの最も大きい国はブルガリアとルーマニアだ。ただ、国家制度の整備の遅れや、改革に慎重な姿勢が障害となっている。
一方、スロバキアとスロベニアはすでに大きく前進しており、今後の生産性向上の可能性は比較的小さい。