国営電力大手のスロベニアGENとクロアチアHEPの両社がスロベニア南西部で運営するクルシュコ原子力発電所をめぐり、周辺諸国との摩擦が強まっている。老朽化による懸念に加え、核廃棄物処分に関する決定が間近に迫っているためだ。
クルシュコ原発は旧ユーゴ連邦時代の1983年に商業運営を開始した。使用済み燃料棒は今日まで原発内に保管されているが、旧ユーゴ時代の契約により、2024年から両国が半量ずつを最終処分場に格納することになっている。
スロベニアが原発から500メートルしか離れていないヴルビナに処分場を持つのに対し、クロアチアの計画はまだ明らかになっていない。クロアチアは2013年の欧州連合(EU)加盟時に、EUに対して処分計画を今年末までに示すことを約束した。その期限が迫る中、中間貯蔵施設をボスニア・ヘルツェゴビナ国境に近いツルゴフスカ・ゴラ(Trgovska Gora)に設ける案を示したが、周辺住民が国境を越えて反対運動を展開している。
ボスニア側の町、ノヴィ・グラドの市長は「水源地は通常、(貯蔵施設立地の)候補から除外される」と発言し、間接的に「水源がボスニア側にあるために考慮に入らないのだろうか」と批判。ボスニア政府も「世界でも例のない」計画と反発した。クルシュコ原発でHEPを代表するペルハリッチ取締役は「技術的には些末な問題で、単純かつ簡単で明快な解決法がある」と反論しているが、内戦以来の不信がくすぶる両国関係の重荷になっている。
一方、クルシュコ原発から100キロメートルに国境のあるオーストリアでは、2016年春に同原発が活断層上に位置している事実が学会で確認され、弱いながらも地震が起きていることから、懸念が強まっている。