中央アジア諸国、外国資本呼び込みに注力

豊富な天然資源に加え人口増や安価な労働力などにより、中央アジア諸国は外国資本にとり魅力的だ。コンサルティング大手のボストン・コンサルティングによると、カザフスタンやウズベキスタンなど同地域の非資源産業に対しては将来的に400億ドルから700億ドルの直接投資(FDI)が行われる可能性がある。各国政府は投資の受け入れ増加に向けて投資条件やビザ要件の緩和などの制度改革を進めている。

■FDI最大のカザフスタン

中央アジアで経済規模が最も大きいカザフスタンの産業インフラ省によると、同国はFDI受入れでも同地域最大で、全体の70%を占める。カザフスタン国立銀行によれば、2018年のFDIの受け入れ額は前年から9.8%増加し41億ドルに達した。投資が増えたのは、鉱業、運輸、商業、金融・保険及びITといった分野だった。

同国はFDIをさらに増加させるため規制緩和や制度の改善に乗り出している。許認可システム、徴税及び関税手続きを改定したほか、移民や旅行者に対するビザの発給条件も簡素化された。ビザなしで同国に滞在できる国の数は62カ国にまで拡大している。

また2018年7月に改正された鉱業法では地下資源の利用に関する行政手続きが簡素化されており、地質探査への投資が増加するものと期待されている。

■規制改革を進めるウズベキスタン

同地域最大の人口を抱えるウズベキスタンでは、この3月1日から様々な規制改革が実施される。外国資本が参加する企業の設立者や関係者用に有効期間3年間の投資ビザが導入されるほか、外国資本参加企業のうち同国で300万ドル以上の製品やサービスを生み出す企業の設立者や関係者は10年間の在住許可を得ることが可能になる。そのほか、◇個人起業家に対する銀行口座開設規制の緩和◇電力供給途絶に対する罰則の導入◇原産地証明の発給期間の短縮◇契約に関する紛争処理手続きの改善――などが実施される予定だ。

2018年の同国へのFDI額は速報値で24億ドルだった。政府は今年、41億ドルのFDIの受け入れを目指している。従来の石油・ガス部門のみならず、冶金、農業関連工業、食品及び繊維部門における投資が計画されているのが特徴だ。

■中国の進出著しいタジキスタン

タジキスタンの統計局によると、2018年の同国へのFDIは17年の5億ドルから増加し6億4,500万ドルに達した。そのうち3億2,600万ドルが工業、建設、鉱物資源の探査及び開発に投じられた。同国内で実施されているプロジェクトの主なパートナーはロシアと中国で、特に中国は過去2年間で30億ドル以上を同国に投資してきた。中国は観光、農業関連工業、水力発電、製鉄、タバコ及び金属など様々な分野に進出している。

同国の国家開発戦略は今後11年間で国内総生産(GDP)を2.6倍にするとの目標を掲げる。ラフモン大統領はタジキスタン国立銀行に対し投資の活性化に向けた措置を早急に取るよう要請しており、投資の増加に期待をかける。

■製造業振興を図るトルクメン、FDIが伸び悩むキルギス

トルクメニスタンでは政府は2025年までに固定資本への投資を2,293億マナト(約655.7億ドル)まで増やす計画だ。そのうち91.3%は製造業に向ける予定で、それにより新規企業の立ち上げを促進し雇用を生み出そうとしている。天然ガスを中心に輸出が好調であり、世界銀行の予想では同国経済は2019年末までに5.6%の成長を達成する見通しだ。

キルギスタンではFDIの受け入れは遅々として進んでいない。一部政党は政府の投資誘致策が不十分だとの見方を示している。FDIへの直接投資の受け入れ額は2018年1-9月期に前期比で31.5%減少した。パンクラトフ経済相は課題としてプロジェクトのための土地不足を挙げる。山国で急峻な地形が多い同国は土地開発が難しく、エネルギーやインフラも不足している。外国からの投資の多くは鉱業部門に投じられているが、開発地域の住民と投資家の間に紛争が生じており投資環境は万全ではない。(1TMT=31.63JPY)

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