東欧諸国は西欧に比べて人工妊娠中絶率が高い。15~44歳の女性1,000人当たりの中絶件数は西欧の16件に対し42件(2010~14年)に達している。それでも20年前(1990~94年)と比べると88件から半分以下に減少した。
中絶が多い国・地域の特徴として、米グットマン研究所は(1)確実な避妊法(低用量ピル、リングなど)を用いていない(2)法的・社会的に中絶が禁止・制限されている――といった点を挙げる。(1)については、貧しい国では避妊費用が全額自己負担というケースも多く、継続的に行うのが難しいという。また、コンドームや膣外射精、基礎体温法など、失敗率の高い方法が一般的という場合もある。
(2)については、中絶が禁止されていたり、カトリック教徒の多いところでは、逆に中絶率が高くなる傾向がはっきりしている。おそらく、中絶に限らず性に関係する事柄がタブー視されることで、正しい知識が広まらず、結果として望まぬ妊娠をしてしまう人が多いのだろう。
東欧の例では、ソ連崩壊後、確実な避妊法の利用が広まったことが中絶件数の減少を決定的に支えた。望まぬ妊娠をした人の比率は20年間で半減した。
望まぬ妊娠の中絶率も85%から77%へ低下したが、これは◇いずれ子どもを産もうと思っていた(タイミングが合わなかった)◇少子化に伴い、婚前妊娠など以前ならば批判されたケースでも社会が認めるようになった――などの理由が考えられる。一定の条件下では、中絶の規制厳格化も低下につながった可能性があるという。