独フォルクスワーゲン(VW)が建設を予定する新工場の立地として、トルコが最有力候補となっているもようだ。採算面で利点が大きいためで、来月中旬までに最終決定するという。具体的には自動車産業の集まるマニサ県イズミル近郊が検討されている。実現すれば、1997年のトヨタとホンダ以来の自動車大手における対トルコ大型投資となる。
候補地としては当初、トルコのほか、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、セルビア、ブルガリアの名が挙がっていた。ポーランドとハンガリーは人件費の高さがネックとなり、早期の段階で外れ、現在はトルコとブルガリアが選択肢として残っている。
ただ、VW筋によると、トルコとの交渉は政府高官レベルまで進み、同国での立地がすでに仮決定済みだ。
新工場に対するVWの投資額は推定13億~20億ユーロに上る。これに対し、トルコ政府は1億ユーロ前後の助成を提示しているという。同国は人件費も安い。国内市場の大きさも魅力だ。
トルコではVWグループ車の人気が高く、昨年の販売台数(乗用車+小型商用車)は約12万台に上った。新工場での製造が予想される中型車「パサート」もよく売れており、公用車への採用も見込める。
マイナス面としては、エルドアン大統領の強権的な政治運営に関連してトルコへの投資自体がVWのイメージ悪化を招く恐れがあることだ。VWの大株主であるヴォルフスブルク州の首相でVW監査役を務めるヴァイル氏(SPD=社会民主党)は「VWの進出がドイツとトルコの関係改善に役立つ」との見方を示している。連邦政府も同じ立場という。
トルコ側はVW進出が政治色を帯びないよう配慮し、大統領は直接交渉に参加していない。また、今年の選挙戦でも一切、VWに言及しなかった。
新工場は当初、SUV(スポーツタイプ多目的車)生産を担当する予定だったが、VW労組の反対でリムジン車に変更された。最初のモデルとしては、2021年に電動車両(EV)の出荷を開始する独エムデン工場から、「パサート」の生産が移管されると推測される。
また、新工場の運営責任は当初、チェコ子会社のシュコダ自が負うと発表されたが、これも労組の反対でVW直轄に変更された。