ロシア政府が化学品の国産化に優遇措置を検討、タイヤメーカーなども対象

ロシア政府が化学品の国産化を進めるため優遇措置の拡大を計画している。現地紙『コンメルサント』が先ごろ伝えたもので、産業貿易省が現在検討している国産化推進のための法令改正案に新たに化学品が含まれるようになる見通しだ。一定の条件を満たした企業に輸出や政府調達における優遇措置を導入する同法案について、国内の化学品メーカーは概ね支持する意向を示している。

優遇措置の対象品目に追加されるのは、化学品のうち低生産量化学物質、化学肥料、接着剤・シーリング剤、植物用化学薬品、繊維製品及びプラスチック製品。これまで同法は機械製品のみを対象としていた。産業貿易省のエフトゥーホフ副大臣によると、改正によりこれらの製品を生産する化学品メーカーにも政府調達への参加などの優遇措置が適用される。

また化学品メーカーは輸出促進のための支援策も利用できるようになる。同支援策は政府の企業競争力強化プログラム(KPPK)を通じたもので、輸出信用における優遇措置が該当する。同措置の予算総額は2024年までで計3,610億ルーブル(49億3,300万ユーロ)。そのうち肥料に3%、その他の化学品に15%が充てられる予定だ。適用に当たっては、化学肥料メーカーは合成、浮選(ふせん)、結晶化、粒状化、圧縮、加硫などのプロセスのうち2つの工程を国内で実施する必要があるほか、タイヤメーカーにはゴムの混錬、押出、成形、加硫などすべての工程の国内での実施が要求される見通しとなっている。

これらの措置に対し国内に製造拠点を持つ化学品メーカーは概ね好意的だ。『コンメルサント』によると、ロシアのタイヤ製造者協会や現地に進出している独タイヤ大手コンチネンタルの関係者は、同措置を支持する理由として、タイヤ生産には部品の組立の工程がなく原料の混合から完成まで一貫して行われるため、措置の適用を受けやすいことを挙げた。また同国最大の化成ソーダメーカー、バシキールソーダは改正案に含まれる適用基準を自社がすべて満たしているとした上で、KPPKの優遇利率を利用することで輸出に際しての輸送費を補える可能性に言及した。

そのほか植物用の殺虫剤を生産する外国メーカーは今回の措置に特に強い関心を持っている模様だ。こうした製品は国内ではほとんど生産されていないが、優遇措置を受けるには15の工程のうち少なくとも5つを国内で実施することが必要とされている。

一方、2014年まで政府は化学品メーカーに対し外国企業との合弁設立による技術移転などを進めるよう求めていた。今回の措置では個別の製品ごとに基準が規定されるため、一部の製品で西側企業の技術に大きく依存している企業には打撃になりかねないとの声もある。(1RUB=1.62JPY)

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