米格付け大手のスタンダード・アンド・プアーズ・グローバル・レーティングス(S&P)は10日、ルーマニアの長期債務格付けの見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げた。前政権(社会民主党:PSD)による支出拡大で今年の財政赤字が従来予想を大きく上回る見通しであることや、来年も議会選挙を控え、政府支出の削減が難しいことを理由としている。格付け自体はBBBマイナスで据え置いた。
S&Pはオルバン首相率いる現政権(国民自由党:PNL)が財政の透明性を高めるため、正当な方法で計算しなおしたことが、財政赤字予想の見直しにつながったと説明した。一方で、前政権下で可決された年金引き上げをそのまま実施するオルバン政権の姿勢に疑問符を投げかけた。
さらに、来年予定される議会選挙を前に、有権者に不人気な緊縮財政が実施しづらい点を指摘し、来年以降の赤字縮小は容易ではないとの見通しを示した。
オルバン政権は先月、今年の財政赤字予測を従来の国内総生産(GDP)比2.8%から4.3%へ、来年は3%から3.5%へ、それぞれ修正した。いずれも欧州連合(EU)の上限(3%)を上回ることから、S&Pでは欧州委員会が「過剰財政赤字手続き(EDP)」による制裁を発動する可能性に触れている。
景気減速も赤字圧縮の足かせとなりそうだ。S&Pでは今年の経済成長率を2.9%、来年は3.5%、2021年は2.9%と予想している。