欧州委、財政ルールの見直しに着手

欧州委員会は5日、欧州連合(EU)の財政ルールの見直しに着手したと発表した。財政規律が厳しすぎ、成長を阻害しているといった批判が出ていることを受けたもので、問題を点検してルールを改革し、現状に即して効率的に機能するようにしたい考えだ。

EUの財政規律を安定成長協定では、各国に単年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内、累積債務をGDP比60%以内に抑えることを義務付けている。順守できなかった国には厳しい制裁が課される。しかし、各国の事情を考慮し、これまで制裁が発動された例はなく、ルールが形骸化しているのが実情だ。ギリシャの債務危機を未然に防ぐこともできなかった。また、イタリアなど南欧諸国からは規律が厳しすぎ、経済成長に必要な歳出が制限されるという不満も出ている。

こうした状況を受けて、欧州委はルールの総合的な見直しに乗り出す。ルールの簡素化、透明化、将来を見越した投資を促進できるようにルールを柔軟運用することや、制裁制度の在り方などについて、2019年半ばまで諮問作業を行い、集められた意見を土台に加盟国や欧州中央銀行(ECB)、欧州議会や学識経験者などと協議し、年末までに提案をまとめる予定だ。

柔軟運用に関しては、欧州委が19年12月に打ち出した包括的な環境政策「欧州グリーンディール」を念頭に、環境関連の投資を財政赤字、債務に勘定しないという案が浮上している。

ただ、ルール緩和をめぐっては、これまでも財政規律順守を重視するドイツなどが、放漫財政の国の尻ぬぐいをさせられるとして反発しており、合意形成は難しいとの見方が出ている。

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