チェコにおける平均賃金の伸び率が鈍化している。英人材サービス会社Hayが先ごろ実施した調査によると、近年同国の賃金は多くの部門で大幅な上昇を示してきたが、昨年からその上げ幅が縮小している。同社は今年についても同様の傾向が続くとみる。
チェコの2019年の月額平均賃金は3万4,105コルナ(約1,300ユーロ)で、前年から7.1%上昇した。Hayによると、求人数は失業者数を大きく上回っているものの賃金は既に上限に達しているとみられ、今後の上昇は望めない見通しだ。特に金融、運輸、観光、ビジネスサービス、法律サービスなどでその傾向が強く、建設、IT、製造業及びエンジニアリングなどでも緩やかな上昇にとどまる。このため17年から18年にかけて見られたように企業が求職者をすぐに採用するような状況はなくなり、採用活動は長期化するとの予想だ。
労働需要を部門別に見るとIT及び通信関連部門が最も大きい。ITは専門家が3万人ほど不足しており、企業はプロジェクトの面白さや社内の前向きな雰囲気、福利厚生などで求職者を惹きつけようとしている。この部門の典型的な賃金水準はウェブ開発者が6万コルナ、プロダクトマネージャーが14万コルナである。
次いで需要が大きいのは建設・不動産とホテル・小売サービス関連部門で、賃金の伸びは比較的大きいものの伸び幅は縮小している。職種別にみると購買担当者、予算管理者、リサーチャーなどの職種の平均賃金は4万コルナ、プロジェクト管理者は18万コルナとなっている。
会計・金融部門及び運輸部門では求人数が減少した。一方でIT、建設、運輸のファイナンスに関連する職種では大きく賃金が上昇している。業務別に平均賃金を見ると、出入金管理業務が3万3,000コルナ、ファイナンス管理者が18万コルナとなっている。銀行部門ではフロントオフィス業務で賃金が上昇傾向にあるのが特徴だ。運輸部門では求人数は抑えられており、企業は現行のスタッフで業務を進めようとする傾向がある。賃金は購買アシスタントで4万コルナ、物流管理者が13万コルナとなっている。
製造・エンジニアリングでは適当な求職者を探すのが難しい状況にあるものの大幅な賃金の上昇にはつながっていない。エンジニアの平均賃金は4万コルナ、マネージャーが16万コルナである。
ビジネスサービスでは賃金の上昇はここ2年間停滞しているが、賃金レベルは上限に達しており、さらなる上昇は見込めないと予想されている。しかし競争力を維持するため企業は賃金を引き上げ続ける必要があるとの見方が示されている。同部門では若年労働者の給与は約3万5,000コルナ、マネージャーレベルで11万コルナが相場である。
観光業は成長しているが賃金は低く、求職者にとり魅力に乏しい部門となっている。賃金は三つ星から五つ星のホテルの料理長で7万コルナ、運営マネージャーが20万コルナとなっている。
同国の失業者1人当たりの求人数は1.7人。特に首都プラハやボヘミア西部ではその数は5人と労働市場は逼迫している。同国全体では現在のところ失業者数20万人に対し求人数は30万人。2019年10-12月期の失業率は2.1%だった。(1CZK=4.45JPY)