欧州連合(EU)は3月24日、加盟候補国となっている西バルカン地域の北マケドニア(旧マケドニア)、アルバニアとの加盟交渉開始で合意した。交渉開始は26日に開かれるEU首脳会議で正式承認され、両国は悲願のEU加盟に向けて大きく前進した。
EUは各国の外相、欧州問題担当相によるテレビ会議で、北マケドニア、アルバニアとの加盟交渉開始を承認した。
旧マケドニアは2005年、アルバニアは14年に加盟候補国として認定され、欧州委員会は18年4月に両国との加盟交渉開始を勧告した。しかし、一部の加盟国が両国の政治・経済改革や汚職、組織犯罪対策の遅れを理由に反対し、実現に至っていない。北マケドニアに関しては、国名をめぐってギリシャと対立していたことも障害となってきた。
とくに強行に反対していたのがフランスとイタリア。両国の改革の遅れが表向きの理由だが、EUが多くの旧共産圏諸国を短期間に受け入れたことで
“拡大疲労”に直面していることも懸念し、拒否権を発動してきた。
これに対してEU内では、北マケドニアとアルバニアが冷遇を受け続けると中国とロシアとの接近が強まり、バルカン地域での中・露の影響力が強まるとの懸念が浮上していた。欧州委は打開策として、2月に加盟手続きの見直し案を発表。現加盟国の権限を強化し、加盟条件を満たすための改革が後退したと判断した場合は加盟交渉を停止できるようにする方針を打ち出した。フランスなどの主張を反映したものだ。
欧州委はフランスのマクロン大統領が同案を支持したことから、大きな障害はなくなったと判断し、2日に加盟交渉開始を改めて勧告。ようやく承認にこぎ着けた。欧州委のバルヘリ委員(EU拡大担当)は「あなた方の将来はEUにあるという明確なメッセージを西バルカン諸国に送ったことになる」とコメント。アルバニアのラマ首相は「遅れはしたが、素晴らしいニュースだ」と喜びを表した。
バルカン諸国ではスロベニア、クロアチアがEUに加盟。モンテネグロとセルビアが加盟交渉を行っている。今回の決定で加盟交渉は4カ国に拡大する。ただ、北マケドニアとアルバニアが近い将来に加盟国となる見込みは薄い。クロアチアは加盟交渉開始から正式加盟まで7年を要した。トルコは2005年に交渉を開始したが、加盟の目途は立っていない。北マケドニアとアルバニアの加盟交渉には、少なくともクロアチアと同程度の期間が必要になると目されている。