欧州委員会は4月28日、欧州連合(EU)・メキシコ間の自由貿易協定(FTA)の改定交渉で最終合意に達したと発表した。新協定には関税撤廃品目の拡充に加え、公共調達市場の開放をはじめとする非関税貿易障壁の低減、投資裁判所制度の導入などが盛り込まれた。法的観点からの条文の確認とEU加盟国の公用語への翻訳が完了後、欧州議会と加盟国は協定の署名および批准に向けた手続きに入る。
EUとメキシコは1997年にFTAを含むグローバル協定に署名し、2000年10月にFTAが発効した。すでにメキシコからEUに輸出されるすべての工業製品の関税が撤廃される一方、EUの工業製品に対する関税も協定発効以前の最高35%から5%に引き下げられ、EU・メキシコ間の貿易額はFTA発効後の15年間で約3倍に拡大した。しかし、この間に経済のグローバル化が進み、世界の貿易構造も大きく変化していることから、双方は16年5月にFTAの改定に向けた交渉を開始。18年4月に大枠合意に達したが、メキシコの政権交代などにより交渉が長期化していた。
欧州委のホーガン委員(通商担当)とメキシコのコリン経済相が28日、残る論点だった公共調達市場の開放と公共調達プロセスの予測可能性および透明性の確保について電話協議を行い、最終合意に達した。
新協定が発効すると、最終的に99%の貿易品目の関税が撤廃され、残りは関税割当制度による無税や低税率が適用される。農産品についてはEUからメキシコに輸出するチョコレートやパスタ、ほぼ全ての豚肉製品の関税が撤廃されるほか、EU産のチーズや脱脂粉乳などの関税割当枠が拡大される。
公共調達に関しては、メキシコ側は州レベルでも市場開放を促進することで合意した。EU筋によると、すでに14の州でEU企業が参入できる環境が整ったもようだ。
投資分野では、投資家対国家の紛争解決に関して従来のISDS条項に代わり、EUが推進する投資裁判所制度が導入される。EUが締結した貿易協定に同制度が盛り込まれるのはカナダ、シンガポール、ベトナムに続いて4カ国目となる。
新協定にはこのほか、汚職や資金洗浄対策に関する条項や、労働・環境・消費者保護などを巡る「貿易と持続可能な開発」に関する項目も盛り込まれた。
EUにとってメキシコは中南米で最大の貿易相手国であり、中南米諸国と最初に締結したFTAの相手国。EU・メキシコ間の貿易総額はモノの貿易が約660億ユーロ(19年実績)、サービス貿易は190億ユーロ(18年)に上る。