スロバキアの若手科学者が開発した簡易人工呼吸器「Qヴェント」が量産体制に入った。本来の人工呼吸器が不足したときの「つなぎ」として考案されたもので、外部電源使用で24時間、内部電源では6時間の連続稼働が可能だ。すでに外務省の国際協力の一環として、イタリアなどの外国に提供を申し出ているという。
「Qヴェント」は鎮静薬の投与を受け、気道が確保された患者の肺に、決められた換気量を送り込む従量式の人工呼吸器で、1回換気量、吸気呼気時間比(I:E比)、換気回数を設定できる。吸気と呼気を隔離し、呼気後の肺の圧力を保つ。患者が覚醒し自発呼吸を始めるとセンサ-が察知してアラームが鳴る。
ブラチスラバのコメンスキー大学で開発された特殊素材を使うことでバイオフィルム(菌膜)が発生しないようにしているほか、フィルターに紫外線消毒装置を組み込んだ。フィルターに使われるセラミック部品を含め、部品は3Dプリンターで作られている。
開発したのはコメンスキー大学物理・理論化学科博士課程に在籍するサミュエル・フルカ、ダニエル・フルカの両氏と、国立がん研究所外来化学治療科のパトリック・パラツカ医長、コメンスキー大学医学部学生のダリボル・ガリク氏。開発費用の捻出では自腹を切ったという。
量産に向けては、コメンスキー大学理学部長室と、コヴァル・システムズ、エンバシスの2企業の資金援助を得たが、生産を継続するにはさらなる資金調達が必要となっている。