エストニアでこのほど、外国人投資家の名を騙ってスタートアップ企業から金を取ろうとした詐欺事件があった。同国の法律事務所Hedman
Partnersのピノ弁護士によると、詐欺師は盗んだ身元を使って実在の投資家に成りすまし、とあるスタートアップ企業の創業者に投資の申し出を行ったという。創業者が相手について簡単に調べたところ、その投資家はこれまでもスタートアップ企業への投資に積極的な人物であることが分かった。創業者は信頼して交渉を始め、やり取りの相手は投資家の財務顧問を名乗る人物に代わった。ここまではよくある展開で、創業者は疑いを持たなかった。
話がおかしくなってくるのは、創業者が投資に関する契約書を先方に送ってからだ。投資家から返答があり、サインすることに何の問題もないが、追加情報として創業家のパスポートのコピーを送って欲しいという。それだけでなく、契約を「合法化」するために1,000ユーロが必要で、それが支払われて初めて投資することが可能になるというのだった。
契約締結のために「手付金」を求められることを不審に思った創業者はここで初めて件の投資家の徹底調査を行い、電子メールの発信元がロシア、ドイツ、ブラジルのサーバーを経由することで隠匿されている事実を突き止めた。また詐欺師に名を騙られた投資家も、その家族ともども個人情報を盗まれていたことが判明した。スタートアップ起業家にとり会社の成長に必要な資金は喉から手が出るほど欲しいものであり、そんな起業家の心理を突いた悪質な犯罪だと言えよう。
ピノ弁護士は、「特に現在のようなコロナ危機のさ中にあっては、スタートアップ企業は投資家の身辺を徹底的に洗うことをお勧めする」と述べている。