ロシアIT産業、4-6月期は損失免れず

ロシアIT産業の今年4-6月期(第2四半期)決算は新型コロナウイルス流行による景気後退を受け大幅な赤字になる見通しだ。政府は戦略的重要産業に対する支援措置の実施を発表しているが、IT企業は対象とされていない。このため業界は政府に対し、税や社会保険料徴収の中断・延期などを含む救済策の実施を求めている。

現地紙『ベドモスチ』によると、同国のIT産業界が提案する15の措置を含む政策パッケージには、コロナ禍で重要度が高まっている遠隔医療や遠隔教育、食品配達といったサービスに関する付加価値税(VAT)の徴収を今年後半から24年にかけて中断することなどが含まれている。そのほか、今年7月から12月の間はIT企業の従業員による所得税の納入を分割払いとすることや、下半期の社会保険料徴収の中止、法人税率の20%から12%への引き下げなどが提案されている。

通信省は産業界の提案を支持する旨を表明している。同省はIT企業への支援策がなければ2020年の政府歳入は1,000億ルーブル(12億8,180万ユーロ)、率にして前年比10%減少するほか、労働者2万7,000人の解雇につながると予測する。4-6月期のIT部門への投資額は前年比で7%低下する見込みだ。

またIT産業界が抱える計2,160億ルーブル(27億6,880万ユーロ)に上る負債も課題となっている。通信省は4-6月期の営業利益はゼロに限りなく近づく可能性があるとし、負債の返済などの支払いを考慮すると最終的には赤字になると予想している。『ベドモスチ』によると、同産業の4月の収益は前年から40%減少した模様だ。ITセキュリティ大手インフォウォッチは、特に法人を顧客とする企業やシステムインテグレーションを主力とする企業の落ち込みが顕著だとの見方を示す。

4月に政府が発表した国家戦略企業には国全体で計1,151社が指定されているが、IT関連企業は対象となっていない。

通信省によると、IT産業に対する救済措置が導入されれば2020年の政府支出は1,987億ルーブル、21年には681億ルーブル増加するものの、救済策を実施することで22年から24年にかけてIT部門から7,827億ルーブルの税収を確保することが可能になると予想されている。(1RUB=1.51JPY)

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