フィンランド電気機器メーカー、エンストのエストニア子会社エンスト・エンセク(Ensto Ensek)がケイラ工場で、集合住宅向け電動車(EV)用スマート充電器「エンスト・ワン」の製造を開始した。EVの普及で需要が見込まれるためで、まずは政府助成により販売が急増する北欧・イタリア市場に照準を定めている。
「エンスト・ワン」では純粋なEVのほか、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)にも対応する。最大アンペア数は16アンペアと32アンペアから選べる。欧州のEV充電規格「タイプ2」の充電ソケットが標準装備されているが、「タイプ2」の固定充電ケーブルあるいは標準ソケット、欧州で広く普及しているシューコ(Schuko)・ソケットのいずれかをオプションで加えることができる。
集合住宅用ソリューションでは、設置・利用が簡単なことに加え、利用に応じて電力料金を正しく請求するためユーザーの特定が必要だ。このため、「エンスト・ワン」では欧州計量器規制に対応するMID電力計を組み込み、無線IC(RFID)カードと併用することで利用情報がクラウドに送信されるようにした。
また、複数の自動車を同時に充電しているときに、電力使用量が住宅の許容量を超えないよう、自動的に電力を調節する。また、住宅管理者が充電に割り当てる総アンペア数を決めることもできる。
エンスト・エンセクによると、EVが普及してきたことで購買層が変化している。以前は一戸建ての家主が主だったが、今では貸しアパート暮らしの人も多い。EVの75%は自宅で充電されているという調査結果もあり、集合住宅向けの充電器に関心が高まっているという。
「エンスト・ワン」の開発・試験は、フィンランドで行われた。北欧の気候・環境を前提に設計されている。直流漏電検出システムと漏電ブレーカーを備える。
親会社のエンストはEV用充電器をスマートシティ関連事業の戦略的製品として位置づける。以前はフランスで生産していたが、2018年にエストニアへの移管を決定した。
エンスト・エンセクはケイラとタリンで工場を操業し、スマート・ヒーターとEV用充電器を製造する。従業員は450人。