2020/10/21

総合・マクロ

チェコ政府、ドナウ・エルベ運河計画に着手

この記事の要約

チェコ政府はこのほど、ドナウ・オーダー・エルベ運河の一部区間の着工に向けた作業の開始を決定した。今回の決定はオーダー川上流域のスビノフからポーランド国境までの区間に関するもので、建設開始は2030年となる見通し。建設費は […]

チェコ政府はこのほど、ドナウ・オーダー・エルベ運河の一部区間の着工に向けた作業の開始を決定した。今回の決定はオーダー川上流域のスビノフからポーランド国境までの区間に関するもので、建設開始は2030年となる見通し。建設費は150億コルナ(5億4,860万ユーロ)と見積もられている。同計画に対しては経済効果や環境問題などを理由に反対の声が上がっており、風当たりが強くなっている。

今回の建設区間における運河の深さは5メートル、幅は40メートル。同運河はドイツ南部とオーストリアを横切るドナウ川、チェコからドイツを通り北海に抜けるエルベ川、チェコからドイツとポーランド国境を通りバルト海につながるオーデル川を結ぶもので、ゼマン・チェコ大統領が熱心に支持していることで知られる。一方、今回の決定について、野党「TOP 09」幹部のマルケタ・アダモバ・ペカロバ氏は、同運河は「火星を植民地にするほどの経済的な意義」があるとツイート。「市民民主党」のズビン・ク・スタンユガ前運輸相も「中国の専門家を引っ張ってくる必要がある」と述べるなど、現実離れした巨大事業だとの批判を強めている。

反対する声はアンドレイ・バビシュ首相率いる与党「Ano」からも上がっている。モラビア・シレジア地区区長のイボ・ボンドラク氏は「我々が生きているのは21世紀であり、交通手段として運河を建設するというのは時代にふさわしくない。何が輸送されるのか自分にはわからない。むしろ高速鉄道などの方が望ましい」と述べた。

自然保護団体などは生態系や地下水脈を大きく損なうとの懸念から運河の建設計画に対し強く反対してきた。オロモウツ大学のマルチン・ルリク准教授は、気温の上昇や埋積作用により運河そのものに流す水量が不足する可能性もあると懸念する。一方、ドナウ・オーダー・エルベ連合代表のヤン・スカリツキ氏はテレビ番組の中で、乾期に水不足になる地域のために国が対応策を取る必要があると話し運河構想に理解を示した。

「緑の党」のペトル・オレル氏は同じ番組で、同運河は自然だけでなくチェコ経済にとっても不要だと強調。今回の政府の決定は単に政治的なものだとの見方を示し、自然をないがしろにしていると指摘した。(1CZK=4.50JPY)