欧州中央銀行(ECB)は10月29日に開いた定例政策理事会で、金融政策の維持を決めた。一方、ラガルド総裁は新型コロナウイルス感染が欧州で再拡大し、ユーロ圏の景気をさらに圧迫しかねない状況にあることから、12月に開く次回の理事会での追加金融緩和を予告した。
ECBは新型コロナウイルス感染拡大への対応として、3月の理事会で年末までに新たに総額1,200億ユーロの資産を買い取ることを決定。同月には追加措置として「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」と呼ばれる新たな資産購入プログラムの実施を決め、国債、社債といった資産の購入を拡大した。PEPPの購入枠は当初7,500億ユーロだったが、6月に1兆3,500億ユーロに拡大したほか、20年末としていた購入期間を少なくとも21年6月末まで延長することを決めていた。
今回の理事会では、PEPPの購入枠を維持するほか、主要政策金利を0%、中銀預金金利をマイナス0.5%に据え置くことを決めた。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ユーロ圏では景気回復の勢いが「予想よりも急激に失速している。短期的に悪化するのは明らかだ」と述べ、景気の先行きへの危機感を表明。今回の理事会では「何らかの追加措置が必要で、次回の理事会で金融政策を調整するということで全員が一致した」として、12月10日の理事会で追加金融緩和に踏み切る方針を示した。
ECBが追加金融緩和を異例の予告の形で打ち出したのは、このところ欧州で新型コロナ感染者が再び急増し、仏独など多くの国が外出、営業制限を強化しており、経済活動が再び停滞するのが避けられない情勢となっているためだ。インフレ率もマイナスが続いている。
ラガルド総裁はあらゆる政策手段を動員し、景気を下支えする意向を表明。すでにECBのスタッフが準備に入っていることを明らかにした。
市場では12月の金融緩和について、PEPPが購入枠の半分を使ったことから、同枠の拡大と購入期間の再延長や、「TLTRO」と呼ばれる長期資金供給オペ(金融機関が融資を増やすことを条件に長期資金を供給するオペ)の拡大が決まるとの見方が出ている。金利に関しては、中銀預金金利のマイナス幅を拡大する手があるが、副作用もあるため、可能性は薄いと見る向きが多い。