欧州復興開発銀行(EBRD)がこのほど発表した旧社会主義諸国の体制転換後の現状に関する報告書によると、これら諸国の国民の45%が経済における国家の役割の拡大と企業の国有化を求めていることがわかった。背景には所得と資産が一部の国民に集中していることや、経済危機をたびたび招いてきた自由市場に対する失望があるとみられている。
同報告書によると、2008年から09年にかけての経済危機時において、金融の自由市場が社会に悪影響をもたらすとの認識が人々の間に生まれた。また排出ガス削減に関わる環境政策などにみられる通り国家の経済への介入は不可避となっており、利害の調整を確実に行い市場の失敗に対処することが国家に求められている。また過去の規制緩和と民営化の過程で社会的な不公正が大きく拡大してきたことも市民の不満につながっている。
同報告書はこれらの3つの要因が経済に政治が強く介入すべきだとの主張の背景にあるとしている。健康及び経済に関連するリスクからの庇護を国家に求める声が高まっているとの見方だ。
同報告書はその理由として、自由市場への参加機会が社会の少数者にのみに大きく開かれているとの認識が広がっていることや、国家機構の弱体化、社会不安と既得権益の喪失、社会的扶助の不足、腐敗の増加などがみられることを挙げている。またそうした傾向が中東欧で権威主義的で外国人排斥を指向する政党の支持につながっているとしている。