2020/12/2

コーヒーブレイク

同盟の歴史と対ロシア観

この記事の要約

ドイツ統一から30年が過ぎたが、東西ドイツの違いがいまだに明確に現れることがある。その一つが「ロシア」に対する見方だ。西部ではロシアを「気味の悪い大国」、プーチン大統領を「怖い独裁者」とみる傾向が強いのに対し、東部ではロ […]

ドイツ統一から30年が過ぎたが、東西ドイツの違いがいまだに明確に現れることがある。その一つが「ロシア」に対する見方だ。西部ではロシアを「気味の悪い大国」、プーチン大統領を「怖い独裁者」とみる傾向が強いのに対し、東部ではロシアに理解や共感を示す人が多い。対ロシア外交で「歩み寄るべき」と考える人は西部で54%、東部では72%と大きな差がみられる。プーチン大統領を「信頼できる」と考える人は東部で約25%だが、西部ではわずか6%弱に過ぎない。

この差はどこから来るのだろうか。ドイツ東部にとってロシアとの経済関係は弱まっており、金銭的な利害関係よりは40年にわたる同盟関係の方が説明に適しているようだ。

社会主義を掲げたドイツ民主共和国(東ドイツ)にとって、ソ連は身近な存在だった。5年生からロシア語が必修だったし、ロシア語能力を競う「ロシア語オリンピック」も開催された。ドイツ語の授業ではニコライ・オストロフスキーの『鋼鉄はいかに鍛えられたか』やチンギス・アイトマートフの『ジャミーリャ』など、ロシア文学が多く取り上げられた。ロシアとの文通も推奨された。

これらの背景に政治的思惑があったのは間違いないが、結果として「ロシア人は仲間」という感覚が育まれた。

また、東ドイツには常に50万人を超えるソ連兵が駐屯していた。プライベートな交流は認められていなかったが、それでも職場や学校、祝賀会、お祭りなどで接点があり、中にはソ連兵と結婚する人もあった。

1985年にゴルバチョフ氏が書記長に就任してからは、ソ連での改革の進展に、多くの人が自国の改革への希望を見出した。それまで禁じられていたユーロ・トリーフォノフ、ヴラジーミル・テンドリャコフ、アナトーリイ・プリスターフキン、ヴァレンティン・ラスプーチンなどの小説が出版され、ソ連の社会問題が東ドイツのそれと似通っていることに気づき、共感した。

もちろん、プーチン大統領が強大な権力を手中にし、強権的な統治を続けているのを是とする人はドイツ東部でも少数派だ。それでも、長年の交流で培った友好的な感情があるため、プーチン大統領を「悪人」と断ずる前に、まずは「わかりたい」と望む気持ちがあるというところだろう。