米フィッチ、ブルガリアとトルコの格付け見通しを引き上げ

米格付け大手のフィッチ・レーティングスは19日、ブルガリアとトルコの格付け見通しをそれぞれ引き上げた。

ブルガリアについては、格付けを「BBB」で据え置く一方、見通しを「安定的」から「強含み」に引き上げた。根拠として(1)パンデミックの影響が予想より小さかった(2)欧州通貨同盟参加の手続きが財政安定を促進する(3)欧州中期予算やコロナ復興基金からの助成金が国内総生産(GDP)を押し上げる――などを挙げている。

フィッチによると、ブルガリアの昨年のGDPは推定4%減で、以前の分析(5.7%減)より下げ幅が小さかった。また、BBBに格付けされる国々の平均(6.6%減)と比べても比較的良い結果となった。(2)については、通貨同盟加盟の前提として厳しい財政基準の遵守が義務付けられるほか、欧州為替相場メカニズム(ERM2)で国内通貨レフの対ユーロ為替相場が固定されることが、財政安定を促進するとみる。

(3)については、欧州中期予算から166億ユーロ(GDPの12%)、コロナ復興基金からは75億ユーロ(同12%)の助成金が割り当てられている。その効果で、GDPが25年までに3%から4~5%に上昇すると見込む。

トルコについては、昨年11月のアーバル中央銀行総裁就任以来、金融政策が「正統的手法」に戻りつつあることを評価し、見通しを「弱含み」から「安定的」に引き上げた。格付けは「BBマイナス」で据え置き。中銀の中立性が十分に確保されていないことや、政治的リスクの存在が足を引っ張っている。

アーバル中銀総裁の下で利上げが実施されて以来、国内通貨リラの対米ドル相場は20%上昇した。一方、大統領主導で総裁人事が決まるなど、中銀に対する大統領の影響力は依然として強い。また、マクロ経済の圧力に対応する中銀の動きも迅速とはいいがたい。これらのことから、中銀の中立性に対する疑念は解消しないままだ。

政治的リスクでは対米関係の緊張が挙げられる。2019年のロシア製ミサイルの購入を理由に、米国が対トルコ経済制裁を発動する可能性が残っていることや、シリア内戦における米国のクルド人系武装勢力支援にトルコが反発していることなどが火種だ。

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