ブルガリア、チェコ、ハンガリー、スロバキア、ルーマニアに対する欧州連合(EU)の農業助成金が、公正に分配されていない状況が、欧州議会会派・欧州緑の党/欧州自由連盟(EFA)の調査「EU助成金の行方(Where does EU mony go?)」で明らかになった。汚職、コネ経済、官僚主義が障害になり、大物政治家と関係を築いている一握りの大規模農家が得をする構図になっている。
EUの農業助成金は600億ユーロに上り、EU予算でも大きな割合を占めている。しかし、調査によると耕作面積の小さい農家は受給が難しく、少数の大規模農家が収入源として助成という「システム」を利用している。受給の多い農家はそれぞれの国の政府関係者と関係が深いことが多い。
例えば、チェコについては欧州委員会の調査で昨年、アンドレイ・バビシュ首相が農業コングロマリットのアグロフェルトへの影響力を維持していると結論付けられた。首相・実業家としての利害の対立が問題とされている。
ハンガリーは、ヴィクトル・オルバン首相および与党・フィデスに近い大規模農家に助成金が集中する。
ルーマニアでは手続きの煩雑さから、小規模農家が申請すらあきらめる状況だ。公的な地籍簿ができたのが2015年のため、土地の所有権の明確化においても小規模農家は不利な立場に立たされている。
ブルガリアも手続きの煩雑なのは同じで、大規模農家が得をしている。2018年には農家のわずか2.4%が助成金のおよそ半分を受給した。
スロバキアはもっと大掛かりで、「選び抜かれた人の手」に金を渡すための「からくり」が機能しているという。スロバキア主計局が昨年7月に、給付方法が非効率的かつ不透明だと批判したばかりだ。
緑の党/EFAのトマス・ヴァイツ農業政策担当議員は、「政治家や実業家が汚職や詐欺により私腹を肥やしていることが調査で明らかとなった」とし、会派として欧州不正対策局(OLAF)による監視とともに、直接給付を10万ユーロまでに制限するなどの措置を提案していると説明している。