2021/4/21

テクノロジー

露ネット通販大手オゾン、フィンテックに進出

この記事の要約

ロシアの電子商取引(EC)大手オゾン(Ozon)がフィンテック分野に進出する。12日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。オゾン幹部によると、サイトを利用する消費者と出店者の双方に対し融資などのサービスを提供 […]

ロシアの電子商取引(EC)大手オゾン(Ozon)がフィンテック分野に進出する。12日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。オゾン幹部によると、サイトを利用する消費者と出店者の双方に対し融資などのサービスを提供するため金融業のライセンスを取得する予定。同国ではとりわけ、中小事業者が妥当な条件で融資を受けるのは極めて難しいとされており、オゾンはサイト利用を通じて取得した商品回転率や顧客エンゲージメント、コンバージョン率(CVR)などのデータをもとに融資を行っていく計画だ。

FTによると、オゾンのEC決済カードの利用者数は45万人。同社はこれをベースに預金事業を展開する意向も持つ。ロシアではインターネット関連企業によるフィンテック参入が進んでおり、ネット通販最大手のワイルドベリーズやIT大手ヤンデックスが銀行事業進出に乗り出している。一方、国営金融・テクノロジー大手ズベル(旧ズベルバンク)も同名の新ブランドを立ち上げ、通販、食品配送、ビデオストリーミングを含む総合的なEC企業への移行を計画している。

ロシアではEC事業が急速に成長している。ソバ・キャピタルは2024年のロシアのEC市場規模は7兆ルーブル(約761億ユーロ)に達すると予想する。市場の成長に伴い、オゾンの評価額は125億ドルに倍増した。一方、小売市場全体に占めるECの割合は依然として10.9%にすぎない。このため同社は事業拡大の余地は大きいとみており、ITやネットインフラ関連にさらに投資を進めていく予定だ。昨年の新規株式公開(IPO)で調達した12億ドルや社債の発行で今年獲得した7億5,000万ドルを原資に、広大な国土に流通網を整備するとしている。

同社の昨年の流通総額(GMV)は前年から144%増の1,974億ルーブル(21億7,500万ユーロ)。オゾンが期待を寄せているのは個人向け(B2C)取引や個人間(C2C)取引が盛んなマーケットプレイスで、出店者の販売実績に応じて手数料を徴収している。現在、マーケットプレイスは商品販売の半分を占めるまでになっている。

オゾンは今年中に配送能力を倍増させるとともに、ECのバックヤード業務全般を指す「フルフィルメント」関連インフラへの投資を3倍まで増やす方針だ。そのため今後数年間は赤字になる可能性があるという。昨年の売上高は前年から74%増の1,040億ルーブルに達したが、営業経費が55%増加したため最終損益は117億ルーブル(1億2,900万ユーロ)の赤字となった。

同社は物流やフルフィルメントの拠点を広告などネット販売以外の事業にも応用するなど、新たな投資を他のサービスの提供につなげて有機的な成長を図る方針だ。