ロシアが新型コロナワクチン「スプートニクV」の受注をこなすため、中国企業との提携を進めている。世界的なワクチン需要に供給が追い付かないなかで「ワクチン外交」を積極展開し、注文が急増しているためだ。医療市場の専門家からは「契約分をすべて供給できるとは思えない」と疑問の声さえ出ている。
ロシアはこれまでに、華蘭生物(河南省)、深セン源興基因、西蔵諾迪康薬業(チベット)の中国3社と生産ライセンス契約を結んだ。生産数は華蘭が1億回分、深セン源興が6,000万回分、西蔵諾迪康が1億回。ただ、これまでのところ西蔵諾迪康の9月出荷開始が発表されたのみで、その他の具体的な生産日程は明らかでない。
英医療調査会社エアフィニティの推測によると、ロシアはすでに100カ国以上から6億3,000万回分を受注した。しかし、これまでの輸出数は1,150万回分にとどまっている。報道によれば、ロシアにおける累計生産数は先月27日までで5,400万回分(2,700人分)弱に過ぎず、ロシア政府も国内生産だけでは需要をまかなえないことを認めている。
ロシアは中国以外にも、インド、韓国、ブラジル、セルビア、トルコ、イタリアなどの企業と生産提携しているが、スプートニクVの量産が確認できるのはベラルーシとカザフスタンの提携先のみだ。このため、現時点においては受注に出荷が追い付くのはかなり困難とみられている。
新型コロナワクチンは世界的に不足している。欧州連合(EU)や米国が国内・域内需要の確保にかかりっきりであるのをよそに、ロシアはワクチンを求める中南米や中東、アフリカの悲痛な声に応えてワクチン外交を積極的に展開してきた。英エコノミスト・グループのエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は先月28日発表の調査で、「ワクチン供給を突破口として、ロシアはすでに様々な国との外交的な結びつきを強化している」とし、EUや米国が新興国で威信を回復するのは難しいと予測している。