欧州議会環境委が欧州気候法案を承認、6月に本会議で採択へ

欧州議会環境委員会は10日、欧州連合(EU)の包括的な環境政策「欧州グリーンディール」の柱となる「欧州気候法(案)」を承認した。6月に欧州議会本会議で正式に採択される見通し。その後、閣僚理事会の承認を経て、2050年までにEU域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標に法的拘束力を持たせる新法が発効する。

法案をめぐる議論では、30年までの温室効果ガス削減目標が最大の焦点となっていた。EUは90年比で40%減を掲げていたが、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は昨年9月の一般教書演説で、50年のカーボンニュートラル(気候中立)の実現に向けて30年までに域内の温室効果ガスを「少なくとも55%減らす」と表明。化石燃料に依存するポーランドやチェコなどが削減目標の引き上げに難色を示したものの、加盟国は12月のEU首脳会議で55%減とすることで合意した。これに対し、欧州議会は90年比で60%減の目標を盛り込んだ修正案を可決。最終的により野心的な目標を掲げる欧州議会が譲歩し、森林の二酸化炭素(CO2)吸収などによる貢献分を差し引いた「正味で少なくとも55%減」とすることで合意した。

法案にはこのほか、EUおよび加盟国の政策を科学的に評価する専門機関として、「気候変動に関する欧州科学諮問委員会(European Scientific Advisory Board on Climate Change)」を設置することや、欧州委が40年を達成期限とする中間目標を設定することなどが盛り込まれている。欧州委は23年に予定されているパリ協定に基づく1回目のグローバルストックテイク(5年ごとに世界規模で温暖化対策の進捗状況を評価するプロセス)の実施後、遅くとも6カ月以内に40年までの削減目標を提案する。

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