チェコ南東部、スロバキア国境に近い人口1万1,000人のキヨフ市で、コロナ給付金をローカル暗号通貨「コレント(Corrent)」で支給する試みが行われている。地元経済振興策を兼ねた時限プロジェクトとして考案されたもので、参加店舗で商品・サービスの代価を支払う際、その半額をコレントで決済できる。残りは通常通りチェコ・コルナで払う。
プロジェクトに参加するのは住民2,000人。まずスマホでオンライン登録し、給付金400コレント(=400コルナ=約16ユーロ)の入った電子財布を取得する。支払い時にQRコードを作成し、店舗がこれを読み取れば、コレント決済が完了する。小売店や飲食店、理髪店など市内の40店舗で利用できる。
ローカル暗号通貨を考案したのは映画プロデューサーでネット事業家でもあるペペ・ラファイさんだ。匿名実業家の寄付3万1,500ユーロを使ってシステムを立ち上げた。「暗号通貨方式」の給付金は使用期限・店舗が決まっていることから、期限内に対象店舗で確実に使われる可能性が高い。これがローカル経済の支援に適しているとされる所以だ。さらに、半額は客が「自腹」で払うため、個人消費の追い風にもなる。
チェコ財務省は「コレント」を暗号通貨ではなく「割引券」と位置付けている。定義はともかく、政府や地方自治体が注目しているのは確かで、キヨフのフランティシェク・ルクル市長は近く、他の自治体でのプロジェクト実施に向けて労働省と話し合う予定だ。
国外でも関心は強く、欧州中央銀行(ECB)では、助成金の支給方法として暗号通貨「電子ユーロ(Eユーロ)」の導入が議論の俎(そ)上にのぼっている。安全かつ効率的で、環境面でも負荷が小さいというのが、その理由だ。(1CZK=5.24JPY)