●制裁対象のEU内の資産凍結と、EUへの渡航禁止を発動
●ルカシェンコ政権の資金源を断つための経済制裁も実施
欧州連合(EU)は21日に開いた外相理事会で、ベラルーシへの制裁拡大で合意した。旅客機を強制着陸させて反体制派ジャーナリストの身柄を拘束するなど、ルカシェンコ政権による人権侵害がエスカレートしていることに応じたもので、新たに86団体・個人を制裁対象に加えた。24日には基幹産業を標的とした経済制裁の発動も決めた。
新たな制裁対象となるのは国防相、運輸相、空軍司令官、裁判官など78人と、ルカシェンコ政権と密接な関係にある8団体。EU内にある資産を凍結するほか、EUへの渡航を禁止する。
経済制裁はルカシェンコ政権の資金源を断つのが狙い。肥料の原料となる炭酸カリウム、石油製品と、たばこ製造に使われる機器のEUへの輸出を禁止する。いずれもベラルーシの主要輸出品で、政府系企業が関与している分野だ。インターネットや電話でのやりとりを監視する機器をEU企業が供給することも禁止する。
さらに、金融制裁として、EUの金融機関によるベラルーシ政府、政府系企業への新規融資、保険サービスの提供や、政策金融機関である欧州投資銀行(EIB)による同国の公的機関への融資を禁止する。
EUは20年10月、大統領選後の混乱が続くベラルーシへの制裁で合意。ルカシェンコ大統領や選挙結果の改ざん、反体制派の弾圧に関与した当局者らに対してEU域内の資産凍結や渡航制限を科してきた。
追加制裁のきっかけとなったのは、ギリシャからリトアニアに向かっていた欧州格安航空大手ライアンエアー(アイルランド)の旅客機が5月23日、ベラルーシ当局によってミンスク空港に強制着陸させられ、同機に搭乗していたジャーナリストのロマン・プロタセビッチ氏(26)が身柄を拘束された事件。EUはベラルーシの航空会社によるEU空域の飛行、域内空港への乗り入れを禁止する措置を即座に発動していた。今回は米、英、カナダと協調し、制裁拡大を決めた。これによってEUによる対ベラルーシ制裁の対象は166人の個人、15団体に拡大する。