トルコとウクライナ、軍事分野を中心に結びつき深まる

●ロシアによるクリミア併合を機に急接近する両国

●防衛装備品の相互供給や、航空宇宙分野の技術移転も

トルコとウクライナが軍事分野を中心に戦略的協力関係を深めている。両国は黒海地域におけるロシアへの対抗という点で共通の利害を有しており、特にウクライナとロシアの関係が悪化して以降はさらに接近しつつある。両国間では今後も武器軍用品の相互供給や技術移転など、軍事面を中心に相互補完的な関係が強化されていく見通しだ。

■トルコからの武器調達に積極的なウクライナ

トルコとロシアの関係は、自国本位のロシアの動きや、欧州とロシアの間でバランスを取ろうとするトルコの姿勢が変数となって常に変動している。2014年のロシアによるクリミア半島の不法占拠を機に、ウクライナとロシアの間の緊張関係が一気に高まって以来、トルコとウクライナの関係も新たな局面を迎えている。トルコの防衛産業アナリスト、ユスフ・アクババ氏によると、ロシアのクリミア領有によってウクライナとトルコ双方の安全保障上の懸念が高まったことが両国の接近につながった。

同氏によると、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコはウクライナに対し軍用品を安価に供給している。トルコからの調達は経済の疲弊したウクライナにとっても値ごろな選択肢だ。またトルコは欧州諸国と異なり兵器の共同開発を厭わないこともウクライナには魅力に映る。トルコは技術移転を伴うウクライナでの現地生産も除外していない。すでにウクライナ陸軍はトルコ製の無人戦闘機(UCAV)「バイラクタルTB2」を購入して運用しており、トルコからの軍艦調達で合意している海軍も同機の導入を検討している。

■ウクライナはトルコの攻撃ヘリにエンジンを供給

武器や軍用品に関し両国は相互に補完的だ。アクババ氏によると、ウクライナの政府関係者は必要に応じてウクライナの軍事企業が生産したサブシステムをトルコ製品に統合できると述べている。ウクライナはヘリコプターエンジンなどの主要部品をトルコに供給する技術力を持っており、トルコ航空宇宙産業(TAI)は大型攻撃ヘリコプター「T929」または「ATAK2」のエンジンをウクライナから購入する意向だ。これらのエンジンはウクライナの航空機エンジン大手「モトール・シーチ」が製造する予定で、これはトルコによる国産化が可能になるまでウクライナがエンジンを供給することを意味する。ウクライナ製エンジンはトルコのバイカル社製の最新の戦闘用ドローン「アキンチ」でも使用されており、両国によるエンジンの共同開発は今後増える見込みだ。

■航空宇宙分野でもウクライナからの技術移転を進める

これらの合意と技術移転は、トルコに対する欧州連合の武器輸出制限に抵触しないことから、同国は特にエンジン技術と航空宇宙産業分野でウクライナからの技術移転を進める方針だ。一方のウクライナは空冷装置用電子部品などの技術移転を必要としているほか、ソ連時代の防衛装備品の更新も進めなければならない。

ウクライナが調達を決めたトルコ製のアダ級コルベット艦に関しても同様のことが言える。アダ級コルベット艦は「MILGEM」の名で開発が進められてきたもので、タービンを外国から調達する際には西側諸国が禁輸措置の対象とする可能性がある。しかしウクライナ海軍に納入する際にはウクライナ製タービンの搭載が予定されており、その場合には禁輸措置を迂回できると考えられている

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