●自動車産業は工業生産高の26%、GDPの9%を担う同国経済の柱
●EUの環境政策に対する国外メーカーの戦略は不透明
確かな技術力と安い労働力を強みに大きな躍進をとげたチェコの自動車業界。工業生産高の26%と国内総生産(GDP)の9%を担う同国経済の柱だ。しかし、欧州連合(EU)の環境政策で脱炭素化への動きが加速する中、旧態依然のままでは自動車生産国としての地位が失われると危惧される。
国内自動車産業からは、大きな変革を推進するしか道はないという声があがっている。しかし、独フォルクスワーゲン(VW)が同じドイツのフラウンホーファー研究所と共同でまとめた調査によると、電動化によって完成車メーカーが受ける影響は比較的小さい。チェコ国内に工場を構えるシュコダ自動車(VWグループ)、現代自動車、トヨタ・プジョーシトロエン(TPCA)の3社はすでに、電動車(EV)とハイブリッド車(HV)も手がけている。
ただし、各社の戦略の詳細は公表されておらず、特に部品メーカーについては将来を読むのが難しい。部品大手が外国企業の子会社で、最終的な立地決定においてチェコが優先されるとは限らないという事情も背景にある。
国際会計事務所大手EYで自動車部門のリードパートナーを務めるペトル・クナプ氏は、「業界には賃金水準を理由にチェコで操業する企業も存在する。これらの企業は(さらに賃金の安い)東の国へ移転するか、大規模な生産の自動化をすすめることになるだろう」と警告している。