ハンガリー、ウクライナ迂回ルートでロシア産天然ガスを輸入

●ガスプロムが15年にわたり、年間最大45億立方メートルを販売

●ウクライナとハンガリーの関係に緊張

ロシア国営ガスプロムは27日、ハンガリー電力最大手MVMのガス輸入子会社MVM CEエナジーと長期供給契約に調印したと発表した。15年にわたり、年間最大45億立方メートルを販売する内容だ。そのうち35億立方メートルは従来の主要ルートであるウクライナを迂回して輸送する取り決めで、これを機にウクライナとハンガリーの関係が緊張を増している。取引価格は明らかにされていない。

ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長によると、来月初めにもトルコ・ストリームおよび南東欧のパイプラインを経由した対ハンガリー輸出を開始する。輸送手数料の激減が見込まれるウクライナは、この契約の締結が「我が国とハンガリーとの関係に深刻な打撃を与える」として、ハンガリーの駐ウクライナ大使を呼び出して厳重抗議。「国の利益を守るために断固とした措置をとる」と強硬姿勢を示した。

これに対しハンガリー政府もウクライナ大使を呼び出し、「天然ガス安定供給を妨げようとするウクライナの行為は主権侵害であり、受け入れがたい」と猛反発した。今回の件を抜きにしても、両国はウクライナに住むハンガリー系住民の扱いをめぐって対立しており、天然ガス問題が関係のさらなる悪化につながる恐れがある。

ウクライナ天然ガス輸送会社は今年4月の時点で、トルコ・ストリーム稼働により輸送量が年間100億~120億立方メートル減るという見通しを示している。ウクライナ政府はやはり輸送量減の懸念から、ロシアとドイツを海底パイプラインで結ぶノルド・ストリーム2の稼働に対しても強く反対している。

ガスプロムによると、ハンガリーは2020年にガスプロムから86億立方メートルを輸入した。MVMは天然ガス輸入で国内最大手。

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