2021/10/20

総合・マクロ

中東欧諸国、欧州委に原発の重要性アピール

この記事の要約

●クリーンで安定供給が可能な原発の必要性を主張●EUでは原発関連技術が「グリーン税制」の対象とならず欧州連合(EU)加盟国のうち原子力発電を推進する中東欧諸国などが、原発の重要性をアピールするため欧州委員会に送付した書簡 […]

●クリーンで安定供給が可能な原発の必要性を主張

●EUでは原発関連技術が「グリーン税制」の対象とならず

欧州連合(EU)加盟国のうち原子力発電を推進する中東欧諸国などが、原発の重要性をアピールするため欧州委員会に送付した書簡が11日、主要紙に掲載された。書簡に署名した国には原発の建設を検討しているポーランドを含む中東欧7カ国が含まれる。EUでは原発関連技術が、脱炭素化など環境及び気候変動対策につながる投資を優遇する「グリーン税制」の対象となっておらず、原発推進国の不満が高まっていた。

同書簡に署名したのはポーランド、ブルガリア、チェコ、クロアチア、ルーマニア、スロベニア、ハンガリーとフランス、フィンランド。

書簡では再生可能エネルギーがエネルギー転換において主要な役割を果たすことを認める一方で、二酸化炭素(CO2)を排出せず安定供給が可能な原発が必要だと主張している。

EU域内では今秋に入り風力と太陽光の発電量が天候不順のため減少する一方で、需要の急増と備蓄の減少により天然ガス価格が上昇している。同書簡では原子力発電により消費者を価格変動から守ることが可能だと強調している。

ポーランドは同国初の原発を2030年に稼働させることを目指している。スロベニアとクロアチアは旧ユーゴスラビア時代に建設されたクルスコ原発を共同で所有している。他の東欧諸国も増設や既存施設の拡張を止めていない。

EU内ではドイツとオーストリアが原子力を「グリーン税制」の対象とすることに反対しており、域内の意見は分かれている。ドイツは来年末にはすべての原子力関連施設を解体する予定だ。

欧州では風力及び太陽光発電の割合が増すにつれて電力供給が不安定になっており、それを補うガス供給の強化が課題となっている。ドイツでは風力発電の減少に伴い石炭と褐炭の利用が増加しており、エネルギー部門のCO2中立化達成に対する再生エネの信頼性が揺らいでいる。

欧州委員会は昨年夏、原子力をグリーン税制の対象としないことを決定した。一方EUの共同研究センター(JRC)は今年4月に同委員会の依頼を受けて行った調査報告で、原子力発電をグリーン税制の対象とすべきだと結論付けている。JRCは持続可能性に対する原子力の貢献を認めたほか、健康や環境に対する影響は小さく他のエネルギー源と遜色はないと評価していた。JRCの結論については同委員会が同じく委嘱した他の2つの専門家グループもその内容を妥当とする評価を下している。