●夏の予測から上方修正、ユーロ圏(4.8%)を上回る数値に
●インフレは軒並み加速も、ユーロ採用国では圧力が小さい
ウィーン国際比較経済研究所(WIIW)は20日、最新の秋季経済予測で、中東欧・南東欧(CESEE)23カ国の経済成長率が今年、平均5.4%に達するという見方を明らかにした。夏の予測より1.2ポイント高く、ユーロ圏(4.8%)を上回る数値だ。第2四半期(4-6月期)の実績はすでに新型コロナ流行前の2019年の水準に回復した。
成長をけん引しているのは引き続き個人消費だ。第2四半期は平均14.5%の拡大を示した。投資も18%弱と高水準だった。ただ、エストニアの大型プロジェクトの占める割合が大きく、地域ごとの伸び率に差がみられた。
輸出も大きく回復した。世界の景気拡大と観光需要の回復が貢献した。ただ、製造業が部品不足に悩まされているのは西欧と同じだ。
雇用はパンデミック前の水準に戻りつつある。クロアチア、ラトビア、ハンガリー、ポーランド、スロベニアではすでに同水準に達したか、これを突破した。
しかし、フルタイム就業を希望しながらパートタイムでしか働けないなど広義な失業率を含む不完全雇用率はパンデミック前より上昇した。西バルカン諸国を中心に、失業率が問題となっている国も依然として多い。
一方、パンデミック中に需要が急増した分野では人手が不足している。この傾向は欧州連合(EU)加盟国に限らず、モンテネグロやセルビア、ロシアでもみられる。
インフレはCESEEでも顕著に加速している。大部分の国で、年初比の上昇率が3~4ポイントに上った。ユーロを採用している国ではインフレ圧力が比較的小さい。
物価上昇を受けて利上げを実施した国も多く、今後もさらなる金利上昇が見込まれる。長期的には、金利コストが上昇すればバブル化が懸念される不動産市場の抑制につながる。しかし、市場過熱の主要因である欧州中央銀行(ECB)の超低金利政策が継続する見通しで、不動産価格の上昇は当面、続きそうだ。
CESEEの平均経済成長率は来年3.7%、2023年は3.5%へ減速する。国別でみると、今年9.1%と予測されるトルコは来年、3.8%へと大きく減速する。一方、ポーランドは今年5.3%、来年4.9%、クロアチアは同7.2%、5%、モンテネグロは8.4%、4.8%、コソボは6%、4.8%と堅調な見通しだ。
不確定要素としては、新型コロナの再流行、財政再建の急ぎ過ぎを挙げる。また、米国の量的緩和の規模縮小も借入コスト上昇を招き、景気に悪影響を与える可能性がある。
EUの復興基金が経済成長率を押し上げる効果は計算上、ルーマニアで2026年まで年3.1ポイント、経済の発達したチェコでも0.7ポイントに上る。ただ、実際に全ての助成金を活用するのは困難で、各国政府の公共投資をほとんど相殺できない分野もあることから、結果としては計算値を下回るのは確実だ。