スキタイの黄金の所有権~ウクライナ

オランダの博物館がクリミア半島の博物館から借りていた展示物の所有権をめぐる裁判で、アムステルダムの高等裁判所は10月26日、一審を支持し、ウクライナに所有権を認める判決を下した。ロシアによるクリミア半島編入が違法であるという認識に立つもので、当たり前ながらウクライナは大歓迎し、ロシアは激しく非難している。ただ、上告の可能性がまだ残っており、これで決着がつくとは限らない。

問題となったのは、アムステルダム大学付属のアラード・ピアソン考古学博物館が、2014年2月に開幕した展覧会用にクリミアの博物館から借り受けた「スキタイの黄金」。重さがそれぞれ1キロを超す兜(かぶと)、胸飾りなどだ。

しかし、展覧会が終わらないうちにウクライナの政情が急転し、ロシアがクリミア半島を占領し、「住民投票」を盾に強行に編入してしまった。かくして、展示品をどこに返すべきかという問題が発生した。

クリミアの博物館の返還要求を受けた裁判は、2016年にアムステルダム区裁判所が「ウクライナに所有権がある」と判断したが、クリミアの博物館側が控訴していた。高等裁判所は控訴審の判決で、1995年のウクライナ博物館法に依拠し、「スキタイの黄金」のコレクション全体が同国の文化遺産であると認定。各博物館に所有権はないと結論付けた。

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領はツイッターで「ウクライナのものはウクライナに取り戻す。スキタイの黄金の次はクリミア半島だ」と喜びの声を書き込んだ。

しかし、今回の判決は未確定で、クリミアの博物館が上告する可能性も強い。いつ、どこへ「スキタイの黄金」が運ばれることになるのかはいまだ不明だ。

スキタイは紀元前8世紀から前3世紀ごろ、黒海北岸からカスピ海北岸のヴォルガ川の草原地帯で活動した騎馬遊牧民。高度な金属加工技術を持っていたことで有名だ。

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