●「緩いロックダウン」、効果は限定的か
●同国の死者数は欧州で最悪、世界でも5番目の多さ
ロシアは8日、新型コロナ対策として実施した9日間のロックダウン(都市封鎖)措置(有給の自宅待機及び飲食店・一般店舗の営業禁止)を解除した。新規感染者数・死者数が記録的な高水準を維持する中の緩和措置で、政府が厳しい感染対策に及び腰である様子がうかがわれる。新型コロナによる累計死者数が欧州最高を記録するなど、大きな打撃を受けているロシアだが、ワクチン接種率も低く、いつトンネルの出口がみえるのか不透明だ。
今回のロックダウン措置の効果について政府は「結論を出すには時期尚早。1週間後の状況をまずは見極めねばならない」と慎重な姿勢だ。ただ、プーチン大統領に近いモスクワのソビャーニン市長は、市内の感染状況が「落ち着きつつある」とコメントした。免疫学が専門のニコライ・クルチュコフ医師は、期間の短さに加え、人と会うことや旅行に出かけることなどが許されていた「緩いロックダウン」だったとし、効果があっても小さいものにとどまると予測している。
8日のロシア新規感染者数は3万9,400人、死者数は1,190人に上った。これまでの最高値(新規感染:4万1,335人、死者:1,195人)をやや下回ったが、依然として高水準だ。同国の死者数は欧州で最悪、世界でも5番目に多い。
今回プーチン大統領は10月30日から11月7日のロックダウンを命じた。期限後も同措置を継続するかどうかの判断は各自治体に委ねられたが、継続を決めたのは83自治体のうちスモレンスク、クルスク、ノヴゴロド、トムスク、ブリャンスクの各州など少数にとどまった。ただし、自治体の多くは飲食店、劇場、映画館などへの入場制限といった他の措置を実施している。
秋に入ってから感染が急激に広まった理由としては、(1)ワクチン接種率の低さ(2)予防意識の低さ(3)政府による予防措置強化の判断の遅れ――が指摘されている。(1)では、人口1億4,600万人のうち、接種が完了しているのは40%未満に過ぎない。
同国の新型コロナ対策本部によると、国内の感染者数は累計で880万人強、死者数も24万8,000人強に上る。しかし、連邦統計局(ロススタット)の集計では、昨年4月から今年9月までに新型コロナで亡くなった人は46万2,000人と、対策本部の数値を大きく上回る。対策本部の方法では主な死因が新型コロナだったケースのみがカウントされるが、ロススタットでは他のケースも含めるため、統計に差が出るという。