2021/11/17

総合・マクロ

中東欧、EU向け半導体部品の供給基地となるか

この記事の要約

●EUは「欧州半導体法」を来年施行し半導体不足に対処する方針●安定供給には域外企業による投資受入れも重要世界的な半導体部品不足が、欧州の製造業を悩ませている。新型コロナ禍からの景気回復に伴う需要急増を受けたもので、自動車 […]

●EUは「欧州半導体法」を来年施行し半導体不足に対処する方針

●安定供給には域外企業による投資受入れも重要

世界的な半導体部品不足が、欧州の製造業を悩ませている。新型コロナ禍からの景気回復に伴う需要急増を受けたもので、自動車メーカーの中には生産の一時中止に追い込まれたところも多い。半導体はコンピューターや携帯電話、自動車、診断機器、セキュリティ機器などに不可欠なため、欧州諸国の間では同部品を域内で確保しようという動きが活発になっており、その中で中東欧が半導体供給のハブとなる可能性が指摘されている。

■EUは域外への依存度引き下げを狙う

欧州では独フォルクスワーゲン(VW)や、伊フィアットと仏プジョーを傘下に持つステランティスなど大手の自動車メーカーが半導体不足に直面している。中東欧ではルーマニアのダキアやチェコのシュコダなどが何度も工場の操業を一時停止した。

これらの状況を受け、欧州連合(EU)はいわゆる「欧州半導体法」を2022年に施行し、半導体不足に対処する方針だ。同法では域内での半導体生産を促進することでEU域外への依存度を下げようとしている。

独シンクタンクのドイツ外交協議会(DGAP)のタイソン・ベイカー氏は、EUにおける半導体をめぐる政治的な動きは中東欧諸国にとりチャンスだと主張する。こうした動きを主導するドイツと地理的に近いことが有利に働くという見方だ。

ドイツは現在、昨年12月に採択されたプロセッサーと半導体技術に関する欧州イニシアチブの一環で、東部のドレスデン近郊に半導体工場の開設を急いでいる。同イニシアチブはポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロベニア、クロアチア、ルーマニアなどの中東欧の加盟国も批准している。

■米インテルは今後10年で800億ユーロを域内に投資

ポーランドのワルシャワにある戦争研究大学のレバンドウスキ氏は、中欧に位置する同国は半導体の生産地としての可能性を持つが、政府の政策措置や長期戦略、EUの資金支援が欠かせないとの見方を示す。

一方、DGAPのベイカー氏は、欧州半導体法が想定している枠組みを超えた協力がなければ半導体の供給を安定させることはできないとみる。欧州企業による現地生産にこだわるのは適切ではないとの見方だ。米インテルは今年初め、EU内に新工場を開設するとともに、今後10年間で800億ユーロを域内に投資する計画を明らかにしている。同社の投資先としてはドイツ、フランスが有力だが、イタリアとポーランドも名乗りを上げている。ベイカー氏は、外国メーカーが欧州で生産することで域内の技術が向上し、技術革新につながる可能性を指摘している。