リトアニア人と自然

リトアニア人と樹木の結びつきは強い。10億ユーロの輸出高を誇る木材産業のためだけではない。自然が文化に及ぼした影響が大きいためだ。 それは、木の名前が人名に使われていることにも表れている。最近では外来の名前が人気だが、それでも伝統的な名前は根強い。男性名としてはベルジャス(シラカバ)、アジュオラス(カシ)、女性名としては、デリャブレー(ヤマナラシ)、リエパ(菩提樹)などがよく知られる。言語学(リトアニア語)を専攻して博士論文を書いたアーグリャ・ジュラウスカイテ氏は、ほかにも自然から採った名前の例として、ギンタラス/ギンタレア(琥珀)、アウドゥラ(嵐)、スニヤゴ(雪)、ウグニェ(火)、ラッサ(朝露)などを挙げる。ジュラウスカイテ氏の名前「アーグリャ」も、クリスマスツリーに使われるトウヒを意味する。 クリスマスツリーといえば、これもリトアニア人にとってとても大事な存在だ。各地でツリーが飾られ、どこのものが最もきれいか競われる。例えば、首都ビリニュスと国内第2の都市カウナスは2021年に、それぞれ 万 000ユーロ、1 万ユーロをツリーに支出した。カウナスは本物の木に蝶をあしらったが、ビリニュスは前年同様、発光クリスタルで組み立てた円錐型の人工ツリーを飾った。これらのツリーが点灯される様子は、いつも国内メディアで報道される。 クリスマスはキリスト教化にともなって、冬至がイエス誕生の祝いに変わったものだが、リトアニアでも元の土着信仰が垣間見える習わしがある。クリスマスイブの食事ではテーブルクロスの下に干し草を敷く。イエスが納屋で生まれたことを記念する と同時に、新しい年がどうなるかを占うための道具だ。おみくじのように、引いた干し草の長さで運の良し悪しがわかるという。

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