ロシアIT大手のヤンデックス、対ロ制裁の余波で危機到来か

●中長期的には債務不履行の可能性がある

●同社を国営化し、統治システムに組み込むシナリオも

欧米などによる対ロシア制裁の発動で、直接には制裁対象となっていない同国IT大手ヤンデックスの先行きにも暗雲が立ち込めている。ロシア経済の不況、国外企業との取引困難で業績が大きく落ち込む可能性があるためだ。

米ナスダックは2月28日、対ロシア制裁に伴う規制上の懸念を理由にヤンデックスなどロシア企業5社の取引を一時停止し、制裁が事業に与える影響について各社に説明を求めた。

ヤンデックスは3日、これに応える形で、2025年償還予定の転換社債(元本12億5,000万米ドル、金利0.75%)について、5取引日を超えて取引が停止された場合に期中償還請求権が発生する取り決めがあると指摘した。そして、これが現実となった場合に元本と金利を合わせて全額を返済するには資金が足りないと発表した。7日にナスダックがヤンデックス株を取引停止から「追加情報請求中」に変更したため、まずは債務不履行を免れた形だが、それでも見通しは明るくない。

ヤンデックスはプーチン大統領との結びつきが強いとはされておらず、直接の制裁対象にもなっていない。しかし、稼ぎ頭の広告収入は今後、激減が予想される。配車事業も可処分所得が減れば不振になるのが目に見えている。長期的には欧米の半導体輸出禁止で事業運営能力を維持できるかも不透明だ。

ヤンデックスが危機から脱出するのに手を貸せる者は少ない。こう考えると、プーチン大統領がヤンデックスを国営化し、テクノロジー・金融大手のズベル、そしてガスプロム傘下のソーシャルメディアVKと連携した「自給自足型」かつ国民監視に適したインターネットを構築するというのが、有力なシナリオの一つとなる。

上部へスクロール