仏ルノーのロシア子会社アフトワズ、部品不足で減産

●16日から生産ラインを部分的に再稼働、18日以降は別に計画

●ロシアはルノーの「お得意先」、撤退は言い出せず

仏ルノーのロシア子会社であるアフトワズは10日、一時停止していたトリヤッチ本社工場とイジェフスク工場の完成車生産ラインを16日から部分的に再稼働すると発表した。18日以降の操業計画は別に公表する。米『ウォールストリートジャーナル』紙の9日付報道によると、生産停止は対ロ制裁による部品不足が原因だ。生産調整で自宅待機となった従業員は数千人に及び、賃金の3分の2が支払われる。部品生産事業及び販売事業は通常営業となっている。

今回のケースは、ロシアのウクライナ侵攻を機に欧米などが発動した対ロ制裁が効き始めたことを示している。「国際銀行間通信協会(スイフト)」のシステムからロシアの大手7銀行グループが排除されたことでサプライヤーとの取引は難しくなった。ウクライナ経由をはじめ、供給ルートは断たれ、通貨ルーブル下落で国外からの調達価格が急激に上昇している。

ソ連時代は「西側」に頼らず部品を調達してきたアフトワズだが、現在はルノーのルーマニア工場に供給を頼っている。消息筋によれば、コネクタから主要電装品まで、部品の2割強が輸入品という。旧取締役の一人は、「ルノーの支援がなければ生産再開まで数カ月、場合によると数年かかるかもしれない」と予測する。

アフトワズは昨年の国内シェアで21%を占めた自動車のトップメーカーだ。ウクライナ戦争ですでに国外メーカーの多くが現地生産を停止しており、アフトワズ工場が操業停止すればロシアの自動車不足に直結する。仏金融サービス企業ケプラ・ショヴリョのトマ・ベソン自動車調査部長によると、ロシアの乗用車登録総数は約4,600万台で平均車齢は15年と高く、買い替えられなければ日々の移動に支障をきたす。

自動車情報サイト「スピードミー・ル」のニキータ・ノヴィコフ編集員は、「ロシアにとってアフトワズとそのブランド『ラーダ』は米国にとってのゼネラルモータースのようなもの」と説明する。国民心理の面でもダメージがありそうだ。

アフトワズはソ連時代の1966年に創業した。黄金期の「ラーダ・ニヴァ」に象徴されるように「とにかく頑丈」なことで世界中にその名を知られた。「故障しやすいが、作りがシンプルなため直すのも簡単」というDIY系のファンがついた。

ソ連崩壊後の2000年代半ばには汚職の横行、低生産性、投資不足というロシア大手企業によくある問題に悩まされたが、2007年にルノーが過半数株式を取得して改革を実行。性能も向上して昨年は35万台を販売した。

ロシアは国別販売台数でルノー・グループにとって2番目に大きい市場で、昨年の販売総数の12%を占めた。1億6,600万ユーロの利益を稼ぎ出してグループの黒字転換のカギを握ったこともあり、ルノーが未だに「ロシア撤退」を言い出せない理由となっている。

アフトワズの出資構成はルノーが67.6%、ロシア政府系のロステックが32.4%。

上部へスクロール