ロシアで新法発効、航空会社にリース旅客機の運用許可

●国外リース会社は航空機の返還を受けられなくなる見通し

●リース機の総数は515機、価値は合計100億米ドルに上る

ロシアのプーチン大統領は14日、国内航空会社が国外からリースした民間航空機を運航し続けられるようにする法律に署名した。対ロ制裁の流れで、ロシアにあるリース機のほとんどの耐空証明が取り消されたことに対応する措置だ。これにより、国外リース会社が航空機の返還を受けられないという見通しがさらに強まった。

即日発効した新法は航空会社に対し、リース機を国内で登録してロシア当局から耐空証明を取得することを認めた。これは、民間航空機の登録国を1カ国に制限する国際法に反するが、大統領は新法によって、リース機の運航継続の前提が整ったという立場だ。

欧米などによる制裁の一環として、ロシア航空会社と取引するリース事業者は契約を解除し、今月28日までに機材を回収するよう迫られている。その数は515機、価値は合計100億米ドルに上る。リース企業は戦争による損害に対しても保険に加入しているが、保険会社側としてもこれだけ巨額の保険金をやすやすとは払えない。リース企業、ロシア航空会社、保険会社の三つ巴の戦いが長期間続く可能性が強い。いずれにせよ、リース事業者は巨額の減価償却を迫られそうだ。

一方、航空機が国内に残っても、ロシア航空業界の根本的な問題解決にはつながらない。やはり制裁の一環で、エアバスやボーイングから代替部品の供給が受けられず、ある機体の部品を他の機体につけかえる「共食い整備」となるのは時間の問題だ。中古部品や非純正部品の使用は安全上のリスクを伴う。これまで外国で利用してきた機体保守サービスが受けられなくなるのも深刻な問題だ。

ロシアの航空会社は、今回の新法で苦しい選択を迫られる。リース機の国内登録を実際にするかしないかの判断が、航空会社にゆだねられているためで、登録すれば、たとえ将来的に欧米との関係が改善してもリース事業者との新規契約は困難となる。一方で、登録しなければ国内線さえ運航できない状況に直面する。ロイター通信によると、ある航空会社の関係者は、本来なら「リース会社に返却したい」という心情をもらしたという。

いずれにしても、航空市場は世界全体で動いている。ロシア政府の措置は国としての信用を落とすもので、ロシアの航空会社が再び国際市場に復帰するハードルは非常に高い。

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