今でこそ表舞台にいる電動車(EV)だが、過去には日の目を見なかった多くのプロトタイプがある。ポーランドの「フィアット125p」もその一つだ。最後に開発が行われていたキエルツェ工科大学からワルシャワの国立技術博物館に運ばれ、展示されることになった。
「フィアット125p」は、ワルシャワにあった乗用車メーカーFSOがフィアットのライセンスを取得して生産していた中型車だ。ワルシャワ電機研究所がEV化を試みて1977年に完成。最高時速80キロ、航続距離100キロを達成した。
1991年からはキエルツェ工科大学で開発が再開され、◇三相インダクションモータの搭載◇回生ブレーキの搭載◇アナログ制御からデジタル制御へ転換――といった改良がなされた。キエルツェ工科大のスワヴォミル・カリシ教授によると、ギアを介さず、直接モーターから動力が後輪に伝わる仕組みで、ギアボックスはダミーに過ぎなかったという。
大きな課題の一つはブレーキ性能だった。重さ40キロ前後のバッテリーが8個搭載されているため、バッテリーだけでも重量が300キロを超える。車体重量が増せば制動距離が伸びるため、走行時速50キロで制動距離30メートルを実現させるのは大変だったという。